【本の感想】山内昌之『嫉妬の世界史』

山内昌之『嫉妬の世界史』は、嫉妬の視点で世界史を切り取ったものです。

歴史は夜作られる、でななくて、歴史は嫉妬で作られるを、洋の東西の文献から証明を試みています。ただし、嫉妬があったんじゃね?ぐらいの想像の範疇ではありますね(そりゃ文献からは正確なところは分かりませんわ)。大きく歴史が動いた嫉妬もあれば、これでは歴史は変わらんだろという細やかな嫉妬による出来事も記載されています。軽い読み物としては最適ですが、ここから何かを学び得ようするとハズしてしまうでしょう。

本書は、嫉妬のパターン毎に九章に分かれてはいるのですが、歴史の流れを追って記載がなされてはいないので、歴史の断片がトリビアとしてばら撒かれているような印象を受けます。なので、長く記憶に留めて置くのは辛いかもしれませんね。

臣下に対する君主、男に対する女、ライヴァル、恩寵を受けるもの、学者たち、天才と秀才、独裁者、兄弟、相容れない関係、と嫉妬のパターンは全てではないでしょうが、よく言われるように女性の嫉妬より、男性の嫉妬の方がねちっこいのがはっきりと著されています。中でも「第三章 熾烈なライヴァル関係」で語られる森鴎外が、嫉妬に敏感に反応している様は、これだけでも本書の一読をおススメしたくなるほどです。

第三回十字軍の英雄サラディンとアッパーズ朝カリフのナースィル、スレイマン大帝の寵姫ロクソラン、雪の博士 中谷宇吉郎と植物学者 牧野富太郎、スター軍人ゴードンと辣腕官僚ベアリングは、本書でお初にお目にかかった人物。それぞれが何を成し遂げたのかを、掘り起こしてみたくなりました。

終章として、嫉妬を免れた人物のエピソードが記載されています。代表格は、中村彰彦 『保科正之 徳川将軍家を支えた会津藩主』でも、名君と誉れの高い保科正之(リンクをクリックいただくと感想のページに移動します)。処世の知恵を学ぶとして紹介されていますが、多少嫉妬されるぐらいが華があってよろしいかと。

ちなみに、自分は、テレビのお金持ちのお宅拝見を絶対に見ることはありません。他人のハイソな生活を垣間見て、何が面白いん?というのが理由ですが、根っこのところは嫉妬ですね。ビッグマネーとは全く縁のないものと諦めたなら気にならないのでしょうが、いつかは一攫千金などと思っているうちは、嫉妬の炎がメラメラと燃え上がります・・・と、いってもたまにLOTO7を買うだけなのですが。