【本の感想】グレゴリー・マクドナルド『フレッチ 死体のいる迷路』

グレゴリー・マクドナルド『フレッチ 死体のいる迷路』(原著)

1977年 エドガー賞ペーパーバック部門受賞作。

グレゴリー・マクドナルド(Gregory Mcdonald)『フレッチ 死体のいる迷路』(Confess, Fletch )(1976年)は、元新聞記者フレッチが活躍するミステリー シリーズ第二弾です。

1975年に同シリーズ第一弾『フレッチ 殺人方程式』で、エドガー賞 処女長編賞受賞し、第二弾でまたまたエドガー賞受賞の快挙を成し遂げました(エドガー賞が名作かはおいといて)。(リンクをクリックいただくと感想のページに移動します

前作が、痛快さの際立った作品だっただけに、本作品への期待も膨らみます・・・が・・・

ローマからボストンへ、ピカソの絵のブローカーと会うためにやって来たフレッチ。ピーター・フレッチャーと名乗って、”美術について書いている”者を自称しています。

フレッチが、住居交換(見知らぬ者同士が互いの住居を交換する取り決めらしい)をした先に着くと、居間には全裸の女性死体が。このアパートの主 パート・コナーズの仕業?フレッチが、警察に通報するも、現場にやって来たフリン警視とクローバー刑事は、フレッチこそが犯人だと決めつけます。

前作同様、災難に巻き込まれるフレッチですが、今回は、殺人の容疑者という深刻な状況。凶器にはフレッチの指紋がついており、被害者のルース・フライヤーは、キャビンアテンダントとしてフレッチと接点があったようなのです。

こういう状況下にあっても、フレッチの口八丁は、顕在です。フリン警視の物腰の柔らかさもあって、ライトな感じでストーリーは展開します。刑事にぴったり張り付かれながらも、得意の張ったりで真相を探ろうとするフレッチ。さらに、並行して何やら怪しげな行動を続けます。

フレッチは、恋人アンディー(アンジェラ)の父 故クレメンティ・デ・グラッシ伯爵の、窃盗により散逸した絵画コレクションの行方を探っていたのです。ホーラン画廊経営者のロナルド・ホーランに目を付けたフレッチは、あの手この手で情報を引き出そうとします。

本作品は、フレッチの捜査行に殺人事件が絡んで、というまっとうなミステリです。前作が、途中ひっちゃかめっちゃかな切羽詰っていただけに、ラストは爽快だったのですが、本作品は比較してしまうと物足りなさが目立ちます。上手くまとまってはいるのですが、真犯人の正体と動機については、今ひとつしっくりしません。フリン警視のキャラが立っているのは、良いのですが。

本作品は、登場人物たちが、皆、肉食系な輩で、如何にも70年代のアメリカンな空気が漂っていますね。

(注)読了したのは角川文庫の翻訳版フレッチ 死体のいる迷路で、 書影は原著のものを載せています 。

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