【本の感想】花田菜々子『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと 』

花田菜々子『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと 』

読書が趣味ですと言うと、ご挨拶代わりにおススメの本は?と尋ねられることがままあります。お相手は、ちゃんとした回答を期待していないのでしょうが、これは酷な質問です。ミステリーとかお好き?純文学?泣ける本・・・?など、掘り下げていくと、途中で会話に飽きられてしまうのが見え見えなので、ストライクゾーン広めの作家及び作品を答えることにしています。例えば、東野圭吾とか、湊かなえとか・・・

花田菜々子『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと 』は、タイトルそのまんまで、おススメ本をお初にお目にかかった方にご紹介する、という試みです。

著者は、旦那としっくりいっておらず、仕事(勤め先はヴィレッジヴァンガード!)も望むものとは路線が変わってしまいました。思い悩んだ挙句、出会い系サイトXで、出会った人たちに本をすすめてみようと決意するのです。煮詰まった時には、行動あるのみ!は共感できますね。出会い系サイトが、自分としては全く良い印象がないので、男女問わず基本的に真面目なつながりを求めている方が、どういう出会いを繰り広げるか興味津々です。

著者は、当然のことながら、アレを目当てな輩など登場して嫌な感じを味わったりします。不快感を露わにするのですが、そういうのも計算づくで出会い系サイトを利用するのじゃないですか。こんなたわけた輩いたけど、にページを割くより、本にまつわるエピソードをより多く欲します。1年70人では、密度の濃いエピソードは生まれないのかもしれませんね。なので、本書を作るのための企画と、穿った見方をしてしまいそうです。著者が、好意を持った男性にオンナの一面を見せる件も、いただけません。

だからといって、本書に見るべき所が無いわけではありません。本書に紹介されている幾つかの本(紹介文がポップみたいですが)、手に取ってみたくなります。自分がいくつか読んだことのある本を、感動的な表現で紹介しているのを見ると、人に薦めるには熱意が必要なのだ実感しました。<<本をおすすめするときの注意>>は、なるほどね、となります。

目を引いた一文を抜き出してみましょう。

その人のことがわからないと本はすすめられないし、本のことも知らないとすすめられないし、さらに、その人に対して、この本はこういう本だからあなたに読んで欲しいという理由なしではすすめられないんじゃないかとも思う。

みんなが不安定さを礼儀正しく交換し、少しだけ無防備になって寄り添っているみたいな集まりだった。
と思ったけど、もしかしたら世界全体もほとんどそうだったりして?

上から目線で「知らない人に教えてやる」ことが本をすすめることだとしたら、自分より知識のある人に対して、自分の存在価値はない。

それで編み出したのが、
「あなたが素敵」+「この本素敵」=「素敵なあなただから素敵なこの本がおすすめです」作戦だった。

ふんふん、そうか。