【本の感想】夏目漱石『坊ちゃん』

夏目漱石『坊ちゃん』

良い子であろうが、なかろうが、誰もが知っている夏目漱石『坊ちゃん』。自分が少年の頃は、国語教科書に一部掲載されていて、この時の坊ちゃんの気持ちを二十文字以内であらわせ、などとテストで書かされた憶えがあります。

中学の新任教師が、嫌味な教頭に一矢報いて辞めた話ぐらいは記憶しており、すっかり読んだ気になっていました。『坊ちゃん』のオマージュである柳広司『贋作『坊ちゃん』殺人事件』を読んで、ディテールを思い出そうと、手に取ってみたら、あら不思議。一度も読み通したことがなかったようです。(リンクをクリックいただくと感想のページに移動します

坊ちゃん(名前はまだない)は、学校の成績が振るわなかったため四国の田舎町へ数学教師として赴任します。漱石が松山の中学教師であったので、本作品は自伝的要素が強いのがつとに知られたこと。坊ちゃんは、田舎に対して上から目線で、小ばかにしたもの言いをするのですが、これは漱石の心情そのものなのでしょうか。

自分が抱いていた坊ちゃんのイメージは、直情型で正義感が強い青年。ところが、自分勝手で、思い込みが激しく、怒りっぽい、子供のまんまの性格です。読み進めていくうちに、結構、嫌な奴だなと思ったりして・・・。中学生に悪戯されて、オラオラになるあたり、ユーモアを通り越して滑稽ですらあります。

その他、山嵐と仲違いしていたり、マドンナとは直接交流がなかったり、赤シャツが執拗に制裁を加えたいほどの悪辣さはなかったり、と記憶違いが多かったですね(読み通していないので当たり前なのですが)。坊ちゃんと山嵐が、赤シャツと野だいこを襲撃する件は、大人の色事があってこそなので、良い子の教科書にはここまでは掲載されませんか。今更ながら、発見すること多々ありです。たまには、少年の頃、読んだ(読まされた)作品を再読してみても良いかもしれません。当時とは違った感想を持つことにはなりそうです。

今読んでも、下女の清と坊ちゃんの交流は、やっぱり、心温まるものはありますね。二人の文通の件は、流石、漱石先生です。このシーンでの坊ちゃんの気持ちを二十文字以内であらわすとすると・・・

本作品は何度か映画化されていますが、自分が記憶しているのはこちら。1977年 公開 中村雅俊、松坂慶子 出演 映画『坊ちゃん』。全然、違うお話だったような・・・。記憶違いの原因がココに・・・

1977年 公開 中村雅俊、松坂慶子 出演 映画『坊ちゃん』