【本の感想】結城昌治『夜が終わる時』

結城昌治『夜が終わる時』

1964年 第17回 日本推理作家協会賞受賞作。

結城昌治『夜が終わる時』は、いわゆる暗黒小説であり、刑事の生き様を描いた警察小説でもあります。

ヤクザ組織 赤座組との癒着を疑われている徳持刑事が失踪しました。徳持刑事の幼なじみで、恐喝の容疑者 赤座組幹部 関口が、逮捕寸前の忽然と姿を消して間もなくのことです。

同僚の刑事たちは、関口、そして徳持刑事の行方を追います。やがて、ホテルで徳持刑事の扼殺死体が発見されて・・・

本作品は二部構成で、一部は捜査活動に専心する刑事達を描き、二部は犯人の視点から事件の顛末を明示するようになっています。

一部では、捜査の折々に、刑事たちの悲哀が語られます。刑事という職業を選択したがゆえに負ってしまった、人生の苦難が切々と表現されるのです。この鬱勃とした描写が、二部で明かされる犯人の動機に深い影を落としています。

徳持刑事の死は、悪行の果てなのか。

捜査が進むにつれて、徳持刑事への疑いが濃厚になっていきます。ここは、いわゆる暗黒小説の趣ですね。そして、横山秀夫に先駆けた警察小説のように、刑事の生き様を掘り下げいます。

真犯人が、吐露する切羽詰まった苦悩の日々。

絶望という言葉がふさわしい幕の閉じ方は、読了後もしばし、重苦しい余韻を残します。犯人探しだけに終始していない、構成の妙が効いている作品です。