【本の感想】フレドリック・ブラウン『復讐の女神』

フレドリック・ブラウン『復讐の女神』

昨年あたりから、フレドリック・ブラウン(Fredric Brown)のSF短編全集が、ちょいといい値段で邦訳出版されました。50年代のSFといえば著者を除いて語れない名手ですが、推理小説でも名を馳せていました。ほぼ絶版状態ではあるものの、今年、エド・ハンターシリーズ『シカゴ・ブルース』の新訳版が出版されたのを契機に、再販をしてもらいたいものです。

『復讐の女神』(The Shaggy Dog and Other Murders)は、創元推理文庫『まっ白な嘘』に続く、 推理小説短編集 第二弾です。

『まっ白な嘘』が傑作だっただけに期待し過ぎてしまったようで、ちょっと平凡な印象を受けてしまいました。とは言っても、これは!という傑出した作品がないだけで、十分に楽しめるでしょう。読後感の悪い作品は収録されていないので読み易くはあるものの、著者ならではの意外な結末を期待するとハズれてしまいます。

面白かったのは『不良少年』『踊るサンドイッチ』(次点は、『名優』かなぁ)の二作品です。

■不良少年
17歳のエディ・マードックは、母と、過去の想い出に生きる祖母との三人暮らし。ある夜、エディは悪友に誘われ、強盗を実行するはめになります。暫くして、心配する母親のもとに、警官が訪ねてくるのでした。警官は、銃撃戦となった強盗犯の行方を追っている言います・・・

さほど展開に期待はしていませんでしたが、ラストは、ちょっとサプライズが待っています。

■踊るサンドイッチ
カール・ディクソンは、知り合いになったばかりのビックとドロシー兄妹と飲み歩くうち、泥酔し、正体をなくしてしまいます。翌日、目が覚めるとカールのそばには射殺死体が。警察に逮捕され、終身刑を言い渡されるカール。彼の婚約者スーザンは、ピーター刑事の力を借り、カールの無実を証明しようとします。しかし、状況は、カールにとって圧倒的に不利です・・・

ほぼ100ページのロマンチックな中編。何といっても、タイトルの意味が秀逸です。

再販を希望するも、著者の積読本には手がついておらず・・・。そのうち、まとめて読破しよう(と思いながら15年経ってしまいました)。