【本の感想】ドナ・M・レオン『死のフェニーチェ劇場』

ドナ・M・レオン『死のフェニーチェ劇場』(NO IMAGE)

1991年 第9回 サントリーミステリー大賞受賞作。
1991年 週刊文春ミステリベスト10 国内部門 第10位。

サントリーミステリー大賞は、海外の作家にも門戸を開いているため、外国人作家が受賞する場合があります。

第9回の大賞は、ドナ・M・レオン(Donna M. Leon)『死のフェニーチェ劇場』(Death at La Fenice)は、日本の文学賞に応募した、アメリカ人の作家が描く、ヴェネツィアを舞台にした警察小説という変わり種です(ちなみに、横山秀夫『ルパンの消息』が佳作に入っています)。(リンクをクリックいただけると感想のページに移動します

当地の習俗に、どこくらい肉薄しているのか判然としないところではあるのですが、本作品は、異国情緒あふるるミステリとして楽しめます。

フェニーチェ劇場で上演されているオペラの幕間、世界的指揮者ヘルムート・ヴェルアウアーの死体が楽屋から発見されました。

死因は毒物。

ベニス警察の副署長グィード・ブルネッティは、他殺の線で捜査を開始します。

伯爵家出身の妻を持つ中間管理職グィード副署長というキャラクターは、ユニークです。生真面目な愛妻家で、正義を重んじ地道な捜査が信条の主人公は、日本人が2時間ドラマで好みそうな設定でしょう。しかしながら、ストーリーは途轍もなく平凡・・・

誰もが認める天才ながら、人格的には憎悪の的となっている老齢の指揮者ヘルムート。ヘルムートに恨みを抱く者は、数多くいます。グィードは、ヘルムートが死亡した前後の状況から、容疑者ひとりひとりのアリバイと動機を洗い出していくのです。正直このあたりは、だらだらとしてかったるく感じます。ハっとするような発見がないため、とても退屈。

事件の真相は、驚くほどのことはありません(先に、巻末の夏樹静子によるネタバレ選評を読んだのが良くなかったのか)。ご当地ミステリのひとつと考えれば、そこそこでしょう。

ちなみに、ブルネッティのシリーズ『ヴェネツィア殺人事件』は、2000年CWAシルバー・ダガー賞を受賞しました。

(注)NO IMAGE画像をクリックするとAmazonのページに移動します。