【本の感想】熊澤弘『レンブラント 光と影のリアリティ』

熊澤弘『レンブラント 光と影のリアリティ』

熊澤弘『レンブラント 光と影のリアリティ』は、レンブラント・ファン・レイン(1606年7月15日 – 1669年10月4日)の作品を、その生涯に照らし合わせながら鑑賞していくというものです。

レンブラントの20代から、肖像画家として富と名声を手に入れ、破産し、そして家族との死別という晩年までを概観します。

本書ではレンブラントの本質に適った自然な描写を生み出すための創作的な態度が強調されています。イタリア・ルネッサンスの巨匠へのライバル意識(創造的競争)、古典主義的な時代の流れに抗うといった反骨精神が印象的です。率直すぎる描写に、当時は違和感を感じた人もいたと著者は言います。レンブラント工房の存在や、コレクションに精進しリファレンスとして自身の芸術に取り入れるといった自己表現のあり方が面白いですね。

本書は、初めてレンブラントに触れる者にとっては最適なガイドブックだと思います。

残念ながら、光と影に焦点をあてた記述があまりに少ないので、美術館で鑑賞して感じたものとのギャップが大きくはあります。実物は圧倒的な光と影の表現が魅惑的なのです。文庫本サイズの図版では、文中で紹介されている細かな描写が判然としないのも難点でしょう。絵画として鑑賞するならば、あとがきにもあるとおり大き目の画集が良いですね。

17世紀前半のオランダでは芸術家同志があつまってヌードデッサンを行う場をアカデミーと言ってたのね。勉強になりますわ。

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