【本の感想】東川篤哉『中途半端な密室』

東川篤哉『中途半端な密室』

東川篤哉『中途半端な密室』は、著者のデビュー頃の作品が収められた短編集です。

全5編の短編は、安楽椅子探偵もので、頭の体操的ではあるものの、不可能犯罪を解き明かす快感は得られます。デビュー作である「中途半端な密室」を読むと、ヒットした『謎解きはディナーのあとで』の軽めのユーモアタッチは、著者の真骨頂であることが分かります。

本作品集では、十川一人、そして、敏ちゃんとミキオの大学生コンビが探偵役です。

■中途半端な密室
運動公園敷地内のテニスコート内で、末次不動産社長 末次幸吉の刺殺体が発見されました。現場は、周囲を四メートルの金網で囲われており、内側から鍵がかかっていたのです・・・

完全な密室ではないだけに、被害者の死が不可解、という捻った状況設定です。新聞記事を見ながら十川一人が、連続婦女暴行事件との繋がりを導き出す推理の冴えが堪能できる作品。これが著者のデビュー作ですか!お上手です。

■南の島の殺人
友人の柏原則夫から、おれ(七尾幹夫)届いた一通の手紙。それは、則夫のバカンス先で起きた殺人事件の解決を依頼したものです。知己となったイギリス人の邸宅の庭で、中年の男の撲殺死体が見つかったと書かれています。死体発見時、被害者は、何と全裸でした・・・

岡山の大学生コンビび、ホームズ役の敏ちゃんとワトソン役のミキオが、手紙の内容から事件の真相を炙り出します。いわゆる叙述トリックですね。言われてみれば納得のオチ。

■竹と死体と
古書店で見つけた、不可解な昭和十一年の新聞記事。それは、十七メートルの竹の上からぶら下がった、老婆の首吊り死体発見のニュースでした・・・

敏ちゃんとミキオが、偶然目にした事件を解き明かします。本作品は、クイズといっても良いでしょう。答えはごく単純なものですが、辿り着くことはできませんでした。歴史的な事件を真相究明のための鍵としている点が、愉しいですね。

■十年の密室・十分の消失
柏原則夫から届いた一通の手紙。そこには、またもや不可解な事件がつづられています。それは、十分の間に建物が一軒、丸ごと消えてしまったという内容でした。

則夫の挑戦に立ち向かうは、敏ちゃんとミキオのコンビです。建物消失の大胆トリックはお見事!の一言に尽きます。過去の因縁話を盛り込んでおり、読み物として良くできた作品です。本短編集のベストを上げるなら、これでしょう。

■有馬記念の冒険
強盗事件の犯人と目された安田賢三。ところが、有馬記念のスタートと同時刻に発生事件は、ゴール時に安田が自宅にいるのを目撃されていました。事件現場から安田の自宅までは二千五百メートル。安田が犯人だとすると二分三十秒で駆け抜けたことになります・・・

事件を担当する深山警部のお悩みを、敏ちゃんとミキオのコンビが解決します。こちらも言われてみれば...という不可能犯罪ものです。

この手のミステリ作品は、真相が知りたくてページを捲るスピードが上がります。その分、忘れるのもスピードアップするような・・・

  • その他の東川篤哉 作品の感想は関連記事をご覧下さい。