【本の感想】東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』

東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』

2011年 第8回 本屋大賞受賞作。

若きコらに良く売れて(読まれて)、テレビや映画になると、読んでいなくても、お腹いっぱいになってしまう作品があります。時間が経つと、きっと面白くないに違いないと思い込み、食わず嫌いが完成する始末。東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』も、そんな陥穽にはまりました。

いつの間にか本棚に紛れ込んでいた、息子の『中途半端な密室』。戯れに読んでみようと思いつつ、その前に名の知れた作品をということで、『謎解きはディナーのあとで』を手に取りました。

結論から言うと、本格ものとして十分に愉しめます。事件が発生する → お嬢様刑事が上司にいじられる → お嬢様が混迷の極みに陥る → お嬢様をコケにしつつ執事が見事に解決してみせる、というパターンの短編集です。一本調子ではありますが、そこが謎解きに集中するには、心地良くはあります(集中しても真相は、容易には分からないのですが)。テレビをチラ見した記憶から言うと、原作の方がキャラが立っているように思いました。

本作品集は、国立署の新米刑事にして世界的に有名な「宝生グループ」のお嬢様 宝生麗子と、その執事兼運転手 影山コンビが初登場するシリーズ第1弾です。麗子の上司は、「宝生グループ」かなり落ちるものの「風祭モータース」の御曹司 風祭警部。チャーミングで小生意気な麗子と毒舌家で推理力が抜群の影山コンビに、勘違いぷりが甚だしい風間警部が絡んで、味のあるミステリに仕上がっています。

■殺人現場では靴をお脱ぎください
25歳の派遣社員 吉本瞳は、部屋の中でうつ伏せの状態で絞殺されていました。ブーツを履いたままで・・・。

ブーツを履いた部屋の中で死の真相は、日常の、あるあるの行動です。麗子の説明だけで真相を解き明かす、安楽椅子探偵の如き影山の推理が冴えわたる作品。麗子と影山コンビの初登場作品です。

■殺しのワインはいかがでしょう
若林動物病院の若林辰夫の服毒自殺と思しき死体が発見されました。若林は歳の離れた家政婦 藤代雅美との結婚を家族から反対されていたのです。雅美は、ひとり他殺を主張して・・・

ワインに毒物を混入するトリックは容易に解決できますが、誰がというのが知恵の絞りどころ。なるほど、納得。

■綺麗な薔薇には殺意がございます
藤倉ホテル 藤倉幸三郎の息子 俊夫が、結婚したいと連れてきた高原恭子。幸三郎が結婚を認めようとした矢先、恭子の死体がホテルの薔薇園で発見されて・・・

真犯人と動機については想定内。何故、薔薇園で死体が見つかったのかが謎解きの肝です。

■花嫁は密室の中でございます
麗子の友人 沢村有里の結婚披露パーティーの最中、有里が自室で何者かに背中から刺されました。犯人は招待客の中にいる!現場に居合わせた麗子と影山は、犯人を見つけ出そうと・・・

ヒントは、”執事”ですね。本作品は、前3作品があってこそ効いてくる内容です。

■二股にはお気をつけください
マンションの一室から野崎伸一の全裸撲殺死体が発見されました。野崎が殺害される前、隣の住人 宮下が、野崎が女性と連れだっているところを目撃していたのです。しかし、他の住人 杉原は宮下と異なる証言をして・・・

これは、残念なオチです。殺人の動機としては、あまりに薄っぺらいですね。何故、裸?の答えのためだけに作られた作品のようです。

■死者からの伝言をどうぞ
消費者金融のワンマン社長 児玉絹江の撲殺死体が自宅の書斎で発見されました。死体のそばには血で書かれたダイイング・メッセージが。しかし、それは何者かによって拭き取られ判別不能なのです・・・

影山のアクションが見られ、一旦、達した結論をもうひと捻りしてくれる作品です。盛り上がりという点では、本短編集のラストを飾るに相応しいでしょう。

エピローグは、「宝生家の異常な愛情」で、麗子の父 宝生清太郎について触れられています。

さて、シリーズの続きを読むか否かは、積ん読本と要相談です。登場人物たちの関係性に変化がなければ、いずれ飽きがきそうな気がしないでもありません。

本作品が原作の、2013年 公開 櫻井翔、北川景子 出演 映画『謎解きはディナーのあとで』はこちら

2013年 公開 櫻井翔、北川景子 出演 映画『謎解きはディナーのあとで』
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