【本の感想】森岡毅『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門 』

森岡毅『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門 』

2017年 ビジネス書グランプリ 6位。

森岡毅『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門 』は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の業績をV字回復させたマーケターが説く、マーケティングのなんたるかを著したものです。

USJは一度も行ったことがないので、マーケティングによってどう変化したのかを体感してはいません。しかしながら、”たった1の考え方”を取り入れるビフォアーとアフターがきちんと整理されているので、理解の妨げになることはありません。

本書は、マーケティングの知識を持っていても、実践の書として参考になります。ただ、著者の自信満々な書きっぷりが、多少、気になりますか。これぐらいでなければ、企業の中核としてビジネスを牽引できないのかもしれません。

会社単位の意思決定をドライブできるのが、本来のマーケティング組織であると著者は主張します。確かに、大企業であればあるほど、各組織の要の役割を果たすマーケティング部は存在しないのかもしれません。会社の上層部からの指示を受けて市場調査をしたりデータを分析したりと、意思決定のための材料を提供している機能のイメージです。マーケティングは、もともと日本にはなかった学問だそうですから、歴史のある企業ではマーケティングの活用が未成熟のままなのでしょう。

では、マーケティングがどのように企業を引っ張っていけば良いのか。著者は、すべからく消費者視点の価値を追求せよ、と述べ、会社側のどんな事情もどんな善意も消費者に伝わらないのであれば一切意味がないと断じます。客の価値を創造するといった場合、往々にして、独りよがりの価値を生み出してしまいます。それは、売上を上げたい、利益を向上させたい、といった自社の都合が一番にきてしまうからなのですね。社会課題を解決するという理念を掲げても、自社の数値目標が先行すると、中途半端なものになりがちです。消費者視点の価値につながるよう、腹をくくった意思決定ができる会社がConsumer Driven Companyであると著者は定義します。

著者が、如何に消費者視点の価値に拘ったかは、USJで取った施策を見れば明らかです。ここは、マーケターの発想を理解する上で、とても参考になります。「先にブランド価値を高め、価格弾力性をできるだけ小さくする(つまり値上げしながら個数を伸ばす)」というのは、低価格戦略に陥らないために重要なのは分かっていても、USJの例示があるとノウハウとして捉えることができます。チケット転売屋のメリットを破壊した手法はお見事!

本書には、使ってみたい用語が散りばめられています。例えば、「ブランド・エクイティ」「パーチェス・フロー」「戦略の4S(Selective、 Sufficient、Sustainable、Synchronized)」、「既存ブランドが成長したいときに有効な6つの切り口(ペネトレーション、ロイヤリティ、コンサプション、システム、パーチェス・サイクル、ブランド・スイッチ)」・・・

よく混乱してしまう、「目的、目標、戦略、戦術」も明快に定義しています。

  • 目的:命題、最上位概念
  • 目標:資源集中投下の具体的な的
  • 戦略:資源配分の選択
  • 戦術:実現するための具体的なプラン

その他、気づきを与えてくれた一文を紹介しましょう。

マーケターの仕事は、会社のお金の使い道や従業員のあらゆる努力を、消費者にとって意味のある価値に繋がるようにシフトさせることです。

マーケターに権限が与えられてこそですね。もちろん、マーケターが優秀であることが大前提です。

マーケティングの本質とは「売れる仕組みを作ること」です。どうやって売れるようにするかと言うと、消費者と商品の接点を制する(コントロールする)ことで売れるようにするのです。

(1) 消費者の頭の中を制する、(2) 店頭(買う場所)を制する、(3) 商品の使用体験を制する、で詳説しています。なるほど。

とりあえず全部やろうとすることは、無意味に資源を分散させているだけの「戦略なき愚か者」のすることです。

確かに、いますねぇ・・・

日本人の多くはあまりにも弱点克服に比重を置きすぎた「ドM気質」

弱点克服よりも長所伸長を優先せよ!は、樺澤紫苑『学びを結果に変えるアウトプット大全』でも述べられていました。

弱点を克服できるケースには、その人の強みをテコにした場合が多いのです。

これは新鮮な切り口です。強く頷いてしまうものの、どうやって、が思い浮かびません・・・

人々は4分の1インチのドリルを欲しいのではない。人々が欲しいのは4分の1インチの穴である

セオドア・レビット

佐藤義男『ドリルを売るなら穴を売れ』のタイトルは、こちらのハーバード大の先生の言でしたか。

マーケティングは人を幸せにすることで自分も幸せになれる科学なのです

おっと、これはまた・・・