【本の感想】陳舜臣『孔雀の道』

陳舜臣『孔雀の道』

1970年 第23回 日本推理作家協会賞受賞作。

陳舜臣『孔雀の道』は、『玉嶺よふたたび』とともに日本推理作家協会賞を受賞したミステリです。双方とも、過去を紐解くうちに意外な真実を見つけてしまうタイプの作品。スパイ小説の味付けをしているのも共通しています。

ただ、本作品は、恋愛小説の要素もあって、主役二人の男女の機微を楽しめるのが特徴です。『玉嶺よふたたび』は、磨崖仏にまつわる六世紀の故事を取り入れるなど、知的好奇心を刺激してくれる作品ですが、本作品はより叙情的な側面にスポットがあたっているのです。

英国人と日本人のハーフ ローズ・ギルモアは、日本の文化を学ぶため13年振りに日本を訪れます。渡航の途中、ローズは、知己となった仏教研究者の中垣に、日本人の母 立花久子のことを知る手助けを依頼します。久子は、ローズが5歳であった22年前、焼死してしまったのです。中垣は、ローズの願いを受け、二人で久子の過去を探り始めます・・・

二人が捜査を進めるうちに、久子が殺害されたのではと確信を深めていくのですが、その過程で久子の姿が浮き彫りになります。愛する人を援助するためローズの父サイモンへ嫁いだ久子。犯人は今は亡きサイモンなのか。当時の関係者の証言から、意外な事件の真相が明らかとなって・・・

打ちのめされていくローズを、不器用ながら支えようとする中垣。ローズと中垣の寄り添いながら、なかなか距離を縮められないじれったさが良いですね。久子とサイモン、その周辺にあった愛憎劇がドロドロなだけに、二人の関係が実にピュアに映ります。

事件が戦時中のスパイ事件へと広がりを見せるなか、久子とサイモンの過去を知るものが殺されてしまいます。22年たった今、誰が、何のために。この謎は、ラストの真相が明らかになるまで分かりません。漠然と予想がつきやすいので、驚きとまではいきませんが、伏線が回収されていく満足感はあるでしょう。

ただ、タイトルの「孔雀の道」の意味が判然としません。深い意味が込められているのか、それとも、そのまんまなのかな。

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