【本の感想】佐野洋『華麗なる醜聞』

佐野洋『華麗なる醜聞』

1965年 第18回 日本推理作家協会賞受賞作。

佐野洋『華麗なる醜聞』は、スキャンダルを追う新聞記者たちの活躍を描いた作品です。

中央日報の論説委員 稗田は、P国元駐日大使ニーデルンのスキャンダル記事を目にします。報道によると、日本人ハイ・ホステスとの関係が元で、離婚した挙句更迭されてしまったようです。

ハイ・ホステスとは何か。

興味を持った記者たちが取材を重ねるうちに、有名人を狙った爆弾騒動との関連性が浮かび上がります。有名人の中に、二人の一般市民がまじっていたのです。ひとりは、ニーデルンが入院していた病院の看護婦。そして、もうひとりは記者が取材をしていたP国大使館の電話交換手でした・・・

記者たちが取材を通して真実に迫っていくのですが、少し先の想像がついてしまうので驚きの展開とはなりません。今ではちょっと考えられない取材方法ではあるし、よく考えるといろいろ都合の良すぎるところも散見されます。”醜聞”の舞台装置もありがちです。

本作品では、記者魂に突き動かされた活動そのものを、じっくり見ていくべきものなのでしょう。行きつ戻りつしながら、事件の核心に迫っていきます。稗田が目にしたちょっとした記事は、記者としての捜査本能をかき立て、やがて隠された大いなる陰謀へと誘います。

本作品は、作家である”ぼく”が稗田の手記を小説にしたという体裁です。冒頭から記事がボツになったことが記されています。ここに謎が隠されているわけです。結末では、意外に大きな風呂敷が広がっていることに気付くでしょう。

解説によると、本作品が、プロヒューモ事件や草加次郎事件をヒントにしていることを示唆しています。刊行当時はタイムリーだったのだろうけれど、今現在となっては、言葉の使い方を含めて、古さが否めないなぁ。