【本の感想】カール・ハイアセン『顔を返せ』

カール・ハイアセン『顔を返せ』(原著)

『顔を返せ』(Skin Tight)(1989年)は、カール・ハイアセン(Carl Hiaasen)にしては珍しくハードボイルド路線です。

主役の元州検察局捜査官ミック・ストラナハンのキャラクターによるところが大きいのでしょう。ストイックな立ち振る舞いが、ストーリーにピリリとした緊張感を与えています。

なぜか、ウェートレスとばかり結婚し、離婚を繰り返すミックは、巨大なバラクーダのいる水上のコテッジでやもめ暮らしという設定です。ピンナップガールの誘惑もピシャリとはねつけます。

So Cool!

そんなミックが関わりあってしまった事件は、4年前に発生した女子大生失踪事件です。今だ未解決のこの事件を掘り起こしていくうちに、ミックは殺し屋を差し向けられるようになります。

糸を引いているのは、著名な整形外科医ルディ・グレイヴライン。テレビの突撃レポータやら、異形の殺し屋らが絡んで、ミックの捜査は混迷を極めていくのでした・・・

ミックは、ハイアセンの作品の中ではいたってまともな男ですが、その他のキャラクターは曲者ぞろい。拝金主義者で手術が一切できないルディ、自己顕示欲のかたまりのレポータ フレム、義手が芝刈り機の殺し屋ケモ。強烈な個性がぶつかり合って、ストーリーを盛り上げていきます。事件そのものの顛末より、キャラクターの暴れっぷりが楽しいですね(ハイアセンの作品に共通だけれど)。特に、ケモの壊れっぷりは必見です。ミックとの丁々発止が、見所でしょう。

本作品に登場するシリーズ・キャラクターは、アル・ガルシア巡査部長。過去の事件に若干ふれているセリフがあるので、ハイアセン マニアには嬉しい限りです。ラストは、お約束のあの人のそれからもあって、ダメ押しの笑いを提供してくれます。

なお、気になるミックのそれからは触れていないのですが、『復讐はお好き?』で再登場します。

(注)読了したのは角川文庫の翻訳版『顔を返せ』で、 書影は原著のものを載せています 。

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