【本の感想】鶴見香織『もっと知りたい東山魁夷 生涯と作品』

本の感想 鶴見香織『もっと知りたい東山魁夷 生涯と作品』

昨年、2019年6月8日(土)から7月28日(日)まで北海道立美術館で「東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」が開催されました。

魁夷が、唐招提寺より御影堂障壁画の揮毫を打診され、完成までに費やしたのが65歳から72歳にかけての7年間。この制作を契機に、水墨画の世界へ踏み入れたそうです。一目見て圧倒的な迫力を感じたのですが、展示されている試作を鑑賞すると、緻密に計算し尽くされた制作プロセスを経ているのが良く分かります。

ただ、自分は、水墨画に対する知識が皆無なので、正しく鑑賞するという態度には到達できませんでした。むしろ「夕星」など、特別展示の鮮やかで美しい色合いの作品に心を動かされた次第です。

東山魁夷という名を知っていても、魁夷の作品と人生に関しては疎いので、復習の意図を込めて尾崎正明 監修、鶴見香織 著『もっと知りたい 東山魁夷 生涯と作品』を手に取りました。もっと知りたいシリーズは、アート・ビギナーズ・コレクションと銘打たれているだけに、入門書としては最適のガイドブックです。ただし、全ての作品が網羅されているわけではないので、作品の鑑賞を主眼とするならば画集に目を向けた方が良いでしょう( 唐招提寺御影堂障壁画展の作品は、本書にほとんど掲載されていませんでした)。

本書を読むと、魁夷が、1908年から1999年、90歳まで生涯現役、そして常に成長し続けようとした人物であることが伺い知れます。序章と全8章からなる解説は、魁夷のライフイベントとそれに伴う作風の変化が上手くまとめられていて、アートのなんたるかを知らずとも自ずと理解が進みます。

自分の好みの作品は、第4章「北欧の旅」(54歳から56歳)以降でしょうか。青と白が鮮やかな作品、例えば「雪原譜」(1963)、「冬華」(1964)、「曙」(1968)、「青い峡」(1968)、「白馬の森」(1972)です。凛とした静寂、そしてそこに秘めたる物語性を感じるのです。魁夷は、老境に入ってもストイックで旺盛な制作意欲があったようです。絶筆となった「夕星」は魁夷 90歳の作品ですからね。

本書を読むと、なるほど名を残す画家は、才能を研鑽するたゆまぬ努力と、成長し続けようとするモチベーションを原動力としているのだと分かります。ビジネスマンとしても参考になりますね。

北海道近代美術館「東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」

北海道近代美術館「東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」入り口の写メです。(2019/7/27撮影)