チェコ出身のスーパー秘密諜報員が、自身の追手を撃退しながら、恋人の行方を執拗に追い求めるうちに、隠された大いなる陰謀を探り当てるという展開のエスピオナージです。満足感は、1,000頁を超す長編を読み切…
【本の感想】ロバート・ラドラム『暗殺者』
1984年 第3回 日本冒険小説協会大賞 海外部門 受賞作。
1984年 週刊文春ミステリーベスト10 海外部門 第4位。
海から救出された瀕死の男。彼は、記憶を無くしていました。治療にあたった医師は、彼の身体に見られる特徴から、特殊な仕事に従事していたと見抜きます。やがて、回復した男は、自身の過去を探るためチューリッヒへ向かい・・・
ロバート・ラドラム『暗殺者』は、ジェイソン・ボーン三部作の第1弾です。大物テロリスト カルロスを炙り出すべく仕立てられた暗殺者カイン=ジェーソン・ボーン=デルタ=米国情報部員デービッド・ウェブの活躍を描いています。
カルロス一派から、執拗につけ狙われているボーン。ボーンは、記憶を無くしたことにより、身内からも裏切り者として命を脅かされるという展開です。満身創痍になりながらの、知力、体力総動員のアクション・シーンが、本作品の見所となっています。読み進めながらハラハラドキドキというのは、まさにこのことだと実感できるでしょう。
しかしながら、テンポは遅めです。暗殺者だった過去への苦悩といった心理描写や、ボーンの過去が明かされるゆっくりしたプロセスが、ストーリーに厚味を与えるのは分かるのですが、どうにも冗長さが否めません。人間味と解釈するべきなのでしょうけれど、プロフェッショナルな主人公にしては、甘ったるいシーンが多く、ストイックさが欠如しているのも気になるところです。
もっとも、読後の満足度は高いので、全体的なもたもた感は、小さなことではあるのですが。
1988年公開 リチャード・チェンバレン、ジャクリーン・スミス 出演『狙撃者/ボーン・アイデンティティ』はこちら。
2002年公開 マット・デイモン 主演 映画『ボーン・アイデンティティー』はこちら。リチャード・チェンバレン主演のものよりこちらの方がメジャーですね(原作に忠実かは別として)。
(注)読了したのは新潮文庫の翻訳版『暗殺者』で、 書影は原著のものを載せています 。
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