生活に関わる身近な経済活動を、コストの観点から分析する書籍です。経済学を学んできた人より、初学者向けでしょう。経済学を学ぶための最初のステップとしておススメの一冊です。
【本の感想】吉本佳生 編『出社が楽しい経済学』
吉本佳生 編『出社が楽しい経済学』は、2009年 NHK教育テレビで放送された同名番組のテキストの体裁です(なので番組の制作スタッフも編者としてクレジットされています)。本書は、経済学で頻出する用語を、卑近な例を用いて解説しており、オモシロ系ドラマ仕立ての番組を観て、テキストを復習(予習でも良いのか)することで理解が進むように工夫されています。
本書のタイトルは、”経済学がわかる” → “会社で誰かに話したくなる” → ”出社が楽しい”、という意図ですね。
本書の扱っているテーマは、 「サンクコスト」、「機会損失」、「比較優位」、「インセンティブ」、「モラルハザード」、「逆選択」 、「価値差別」、「裁定」、「囚人のジレンマ」、「共有地の悲劇」、「割引現在価値」、「ネットワーク外部性」の12項目です。
第1回「サンクコスト」を例にとると、まず問として、”5年間高価なプレゼントを渡してきたカノジョに別れを切り出された。引きとめるべき?”、があり、続いて経済学では、それをどのように考えるかという解説がなされます。ファイナンスを学んだ方なら、回収できないコスト、つまりサンクコストとして考える、は分かっているでしょうけれど、男女のお付き合いを引き合いに出している点は新鮮です。「吉本先生のワンポイント経済学」で学問としてフォローしてくれるので、ぼやっとしたままでは終わりません。テーマ毎にデレクターの番組裏話(コラム)が挿入されていて、「はじめに」にあるとおり経済学者と経済学シロウトの番組スタッフの、番組づくり、本づくりに対する相乗効果が見て取れます。
用語の辞書検索では物足りない、かといって、本格的(?)な経済学の解説書を読むのは億劫だ、という自分ような人には適当な読み物でしょう。本書を手に取って、漠然と知っていた用語についての誤解を、払拭できました。より深い知識を学びたくなるような、興味のあるキーワードも発見したので、ステップアップしてみようという気になります。出社が楽しくなるのは、それからでしょうか。
こちらは、『出社が楽しい経済学』第2弾です。本書に合わせて、テレビ番組も第1弾に引き続き制作されています。
体裁は、『出社が楽しい経済学』と同様です。 個人的には、本書の方が、他人に話したくなるような話題をより多く取り上げています。
扱っているテーマは、「ロックイン」、「コミットメント」、「ヴェブレン効果」、「心の会計」、「スクリーニング」、「勝者の呪い」、「レントシーキング」、「規模の経済」の8項目です。若干、内容は濃い目ですね。
第4回「 心の会計」で述べられている、行動経済学のイロハには興味が惹かれました。経済学は、合理的な行動を前提としてますが、行動経済学は、非合理な行動に規則性をみつけ、その論理的な根拠を説明しようとするものです。読み進めながら、「そういえば、こういうことあるある」というのが、○○効果のように定義されているのを発見しました。なかなか楽しい世界であることを実感した次第です。
どうやら、経済学への興味を喚起するという本シリーズの目論見(?)は、自分には有効だったようですね。
DVD付きブックも発売されていました。こちらは1巻9 0分番組 3話分が収録されています。全4巻です。
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