経済学の解説書を読むのが億劫だという方には最適な読み物です。より深い知識を学びたくなるような、興味のあるキーワードを発見できるでしょう。出社が楽しくなるのは、おそらくステップアップしてからでしょうね。
【本の感想】吉本佳生『スタバではグランデを買え! ― 価格と生活の経済学』
吉本佳生『スタバではグランデを買え! ― 価格と生活の経済学』は、生活に関わる身近な経済活動を、コストの観点から分析するものです。
どちらかというと、経済学を学んできた人より、自分のような初学者向けの書籍でしょうか。○○は、○○せよ! とか、○○は、○○だ! 的な、あざといタイトルの本は、ハウツー本ぽくて生理的に受けつけないところがあるのですが、本書の内容には抵抗感はありませんでした。
著者は、NHKの経済バラエティー番組『出社が楽しい経済学』に出演されていました。番組を通してでしか分かりませんませんが、本書も著者の柔和な人柄が良く表れた著作です(リンクをクリックいただけると感想のページに移動します)。
日本で、ふつうに暮らしているような生活者が、自分なりに楽しく生活するためには、経済のしくみをどう理解したらいいのか?
著者の意図は、これを説明することにあります。実に単純明快です。本書は、各章で取り上げるテーマを読み進めることによって、理解が深まる構成となっています。何より、添えられている図表が分かり易いのです。
いくかの章の解説、例えば、携帯電話料金のからくり、100円ショップの安さの秘密は、良く知られるようになってきました。注目したのは、取引コストからものの価格を考えるという一貫した視点と、物事を分解して考えるということです。特に、本書のタイトルでもある、スタバでグランデを注文することが、店と客の双方にメリットがあるという解説に興味を惹かれます。
本書の趣旨と外れるものもありますが、
得格差の問題の大部分は、本質としては資産格差の問題である
容姿や資格は賃金の下限を高くする効果しかもたない
子供の医療費の無料化は、本当に弊害が大きな政策で、格差の拡大さえもたらす危険性がある
という著者の主張は、とてもユニークです。全面的に賛成というわけではないのですが、経済学者らしい理屈に裏打ちされています。語り口が扇情的ではない点も好感が持てます。
本書の内容に、難解さはありません。ただし、苦労して読み込まないだけに、暫くすると忘れてしまうかもしれません。経済学を学ぶための最初のステップとしては、おススメできる一冊です。
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