【本の感想】シャーリイ・ジャクスン『くじ』

本の感想 シャーリイ・ジャクスン『くじ』

3年に一度、仕事上のトラブルでヘロヘロになります。オリンピックか!と勘違いするぐらい、このサイクルは続いています。

こういう時は、心身ともに弱ってくるので、ちょっとしたことを、いろいろと考えすぎてしまうようです。不健全に内省的になっていることを自覚するのです。止まない雨はないことを経験的に分かってはいるから、困難が過ぎ去っていくまで、ブルーな日々を粛々と過ごすことになります。もはや習い性と化しているのかもしれません。

異色作家短編集12シャーリイ・ジャクスン (Shirley Jackson) 『くじ』( The Lottery )は、そんな不快な気分の時を思い起させる作品集です。

客観的には些細なことが、受けての精神状態によっては非常に辛い現実に映るものです。気持ちがささくれだってくる様が、苛立たしくさえあります。 本作品集は、他者と自己、都市と地方といった相容れない二者の感情的な隔たりを、ネガティヴな側にスポットを当てて描いているようです。

『丘の屋敷』のような幽霊譚ではありませんが、寒々しい居心地の悪さはホラーと同質のものかもしれません。

面白かった(?)作品を紹介してみましょう。

■おふくろの味
ディヴィッドが食事に招待したのは、同じアパートのマーシャ。マーシャは訪ねてきた自分の上司に、ディヴィッドの居心地の良い部屋を、我が家のようによそおい始めて ・・・

登場人物それぞれの性根が、なんとも不愉快極まりない作品です。

■決闘裁判
小物が少しずつ盗まれているエミリイは、犯人が下の部屋のアレン夫人だと睨んでいた。アレン夫人の外出を見計らって部屋に入ったエミリイは、予想通り自分の持ち物を発見するのだが ・・・

気弱で内省的な人物を描いていて、本短編集に通低するような作品です。

■チャールズ
幼稚園に通い始めた息子のローリーは、ひどい悪さをするチャールズの話しを、毎日するようになる。堪りかねたわたしは、PTAの会合で、チャールズの母親を見つけ、問い詰めてやろうと決めたのだが ・・・

本短編集は、ぼんやり終わってしまう作品が多いのだが、本作品は集オチのつけ方がピカ一です。

■アイルランドに来て踊れ
世間話をしていたアーチャー夫人、キャシイ、コーン夫人のもとへ、物乞いの老人が訪ねてきた。アーチャー夫人らは、老人を招き入れ、食事をふるまい始めるが ・・・

ラストの痛烈さが印象的な作品です。

■大きな靴の男たち
田舎で暮らし始めた若きハート夫人を、何くれとなく世話をするアンダーソン夫人。しかし、ハート夫人は、アンダーソン夫人に謂れなき恐怖を抱いていた ・・・

この作品もまた、気弱で内省的な人物が、ゴリ押しの負けてしまうという不快な作品です。

■くじ
村人たちが集まり始めたのは、くじをひくためだ。くじに当たったものは、石を持った村人たちに追われることになる ・・・

他のアンソロジーでもお目にかかるシャーリイ・ジャクスンの代表作。アンソロジー『厭な小説』にも収録されています。まさに、厭な小説の象徴です。

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