【本の感想】恩田陸『ネバーランド』

恩田陸『ネバーランド』

冬休みを迎えた男子校の寮「松籟館」。美国、光浩、寛司は、帰省せずに、ここで過ごすことを決めました。順調な滑り出しの3人の共同生活でしたが、自宅通学生の統が乱入してきたことで変化がおとずれます。酔った勢いの4人の告白ゲーム。統は母親の自殺の真相を語り始めるのでした。幼い頃に統が手を下したのだと ・・・

恩田陸『ネバーランド』は、男子高校生たちのひと冬、7日間の物語。親との縁が薄い彼らの集う「松籟館」がネバーランドです。親とはぐれた永遠の子供たち。

性格の良い美国、美形で洞察力の鋭い光浩、快活で包容力のある寛司、天才肌の統。それぞれ4人を配置すると、それぞれの対局にある人物が見つかります。一見して交わらない彼ら。それもそのはず。4人の統合した人格が、(おそらく著者の)理想的な男子高校生なのです。いわゆるイデア。美国らの4人が、理想的な男子高校生から、個性となる4つの要素を抜き出して実体化したように思えてしまいます。

4人が興じるテニスやジョギング(寛司はテニス部の部長、美国は中距離走の選手)は爽やかさを、毎夜繰り広げられる酒とタバコが不良っぽさを表象しています。爽やかな中にもちょっとした不良を感じる理想的な高校生。完璧じゃん!

日を追う毎に、4人それぞれの苦悩が明らかになっていくのだけれど、自分は多少抵抗を感じてしまいます。普通の高校生よりも上流に分類されるだろう彼らの陰の部分が、取って付けたよう見えるからです。もちろん光浩の過去はショッキングです。他の3人の苦悩など吹き飛ばしてしまうぐらいの破壊力。ただ、これも彼ら4人が成長するためのお膳立てのような気がしてしまうのです。

4人が自分をさらけ出し、分かち合い、分かり合える場所がネバーランド。大人の境界へすらまだまだ先ではあるものの、7日間の経験を通して、4人は当面の方向性を見出したようです。これを感動と呼ぶべきなのか。素直に感動できない自分の感性を嘆くべきなのか。面白くないわけじゃないけど、すっきりしません。

本作品は、子供の本棚にあったものです。感想を聞くと「忘れた~」という一言。色々、思うところがあったのにぃ ・・・

本作品が原作の、2001年放映 今井翼、三宅健 出演 ドラマ『ネバーランド』はこちら。

2001年放映 今井翼、三宅健 出演 ドラマ『ネバーランド』
  • その他の恩田陸 作品の感想は関連記事をご覧下さい。