青年 悟と猫のナナのロードノベルです。仲良きことは美ししきことかな。愛に満ち満ちたラストは、静謐さすら感じるでしょう。泣き所はいっぱいあるけれど、本を閉じるまで我慢してちょうだい。幸せとは何かを、改め…
【本の感想】有川浩『植物図鑑』
有川浩『植物図鑑』は、めろめろメロウな甘茶ソウル的作品です。
本作品は、主人公さやかが、行き倒れの男イツキを拾うシーンから始まります。名前しか明かさないイツキは、植物に関する博識さと料理のウデで、早々にさやかを魅了するんですね。不思議な同居人に、徐々に、恋におちていく さやか。ゆっくり、やさしく二人の関係は進んでいきます。
さやかとイツキの愛言葉は、二人が散歩をしながら見つけ、採り、そして料る(りょうるって!)道端の植物の名前です。ノビル、セイヨウカラシナ、イヌガラシ、スカシタゴボウ、イヌユビ、スベリヒユ ・・・さやかが植物を知り、その植物を食すたびに、深まるイツキとの幸せの時。イツキが言った「雑草という名の草はない」は、いつしか、さやかのツッコミワードになってしまいます。
本作品は、突然の出会い、募る思い、嫉妬、別離、そして・・・ という恋愛小説の王道フォーマットに則っています。「女の恋は上書き式、男の恋は保存式」(名言!)と言う さやかにとって、上書きできない恋の物語なのです。
とはいえ、自分は、本作品を読み通すのに難儀しました。さやかの「は~い」とか、「いやだ、もぅ」とか、「わーい」というのを目にすると、肌が粟立ち、背筋に冷たいものが走ってしまいます(多分、こういう表現のはずですが、読み返すのが辛い・・・)。どっぷりと作品世界に入り込んでしまったがゆえに、読み進めながらぶつぶつと独り言をいっていたはずです。
どうにも年齢的に、受け入れられないところか多い作品です。そういうわけで、本編より、サイドストーリーの「カーテンコール 午後三時」の方が、しっとりとしていてお気に入り。
本作品が原作の、2016年 岩田剛典、高畑充希 出演 映画『植物図鑑』はこちら。
原作の、「料る」、「わ~い」といった、ぞぞっとするセリフはありません(「は~い」は一回だけか・・・)。映画の方が、平常心を保てて、さらにラストは少しばかりウルっときてしまいました。高畑充希の、社会人になってちょっとキレイになりました系女子が良いです。ドキドキや嫉妬の感情が自然で、おっさんにも、鑑賞に十分耐えられると思います。しかし、イケメンだから拾っちゃうんだよな。うんうん、納得・・・
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