【本の感想】君塚直隆『ヴィクトリア女王 ― 大英帝国の“戦う女王” 』

君塚直隆『ヴィクトリア女王 ― 大英帝国の“戦う女王” 』

英国 ヴィクトリア女王の在位期間は、18歳で即位した1837年から、1901年に81歳で逝去なされるまでの、何と64年間に渡ります。英国史上ナンバーワンの君主!なのです。

君塚直隆『ヴィクトリア女王 ― 大英帝国の“戦う女王” 』は、ヴィクトリア女王の生涯を辿りながら、「太陽の沈まない国」として隆盛を極めた大英帝国での、ヴィクトリア女王の”戦い”に焦点を当てたものです。全111冊に及ぶ女王の日記を、丹念に読み込んでものしたという大変な労作となっています。

「国王は君臨すれども統治せず」の原則では、ヴィクトリア女王は、実質的な政治権力を保持してはいません。ですが、ヨーロッパ諸国が鍔迫り合いを繰り広げる当時の社会情勢や、英国国内の政治不安の中で、女王の果たした役割は大きいものだったと著者はいいます。なるほど、本書を読むと、女王が内憂外患の状況下で如何に政治家を叱咤激励し、各国との折衝に関与していったかが見て取れます。政略的な意図は感じさせませんが、結果としてプロセイン、ロシア等諸外国との姻戚関係も構築していくのです。

印象的なのは、ヴィクトリア女王の、ヨーロッパの国際政治における「大国としての地位」への拘り。大英帝国の覇権を維持し続けるために、植民地政策を積極的に推し進めていきます。版図を拡大して、ついにはインド帝国の女帝にまでなってしまうのです。本書からは、当時の国民感情をあまり窺い知ることはできないのですが、女王は、ヨーロッパ諸国の思惑が複雑に絡み合う中での、難しい舵取りを続けたことになります。

勲章を創設するなど多くの名誉をばら蒔いて、大英帝国の領土のために、そして君主制を守り抜くためにヴィクトリア女王は戦います。まさに帝王学の申し子です。その反面、夫君のアルバートへの終生変わらぬ愛や、人に対する感情的な好悪という女性らしい一面もあったようです(ビスマルクは、面談するまで嫌いだったとか)。

私はまだ死にたくない、まだまだ差配しなければならないことが数多く残されている

これがヴィクトリア女王の最期の言葉です。15年後、ヴィクトリア女王の姻戚たちが敵味方に分かれて戦うことになるのですが、これを目の当たりにしなかったのは、幸せだったのかもしれません。それとも、偉大なるグランママの死が、火薬庫の導火線に火を着けてしまったのでしょうか。

ヴィクトリア女王の人生を紐解くなら、ドラマからの方が入り易いのかもしれません。ジェナ・コールマン主演 英テレビ番組 『女王ヴィクトリア 愛に生きる』はこちら。

ジェナ・コールマン主演 英テレビ番組 『女王ヴィクトリア 愛に生きる』