【本の感想】ハンス・ロスリング 、 オーラ・ロスリング 『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』
コロナ禍の世の中、あちこちでデータ、エビデンス、○○率というワードが飛び交うようになりました。元来文系で数字が苦手な自分は、データ、データ、さらにデータを見よ!と、迫られたら、何となく正しいように感じてしまいます。うんうん、そうだろうね、と。しかしながら、予想が外れることも多くて(外れることの方が圧倒的に多い)、その場合は、日本人の性質として、とか皆さんの努力により・・・という漠然としたものが理由として取り上げられます。何さっ!
ハンス・ロスリング 、 オーラ・ロスリング (Hans Rosling 、 Ola Rosling )『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(Factfulness: Ten Reasons We’re Wrong About The World – And Why Things Are Better Than You Think)は、データから真実を読み解く術を与えてくれるものです。
世界は、どんどん悪い方に向かっている!という誤った見方に対し、データからそんなことないんじゃね?と言ってくれます。本書の、思い込みの例示を見てなるほどと頷くことしきりです。ベストセラーとなっているのも宜なるかな。コロナ禍の今だからこそ、読むべき本でしょう。
著者は、思い込みを10の本能に根差していると説きます。曰く、『分断本能』、『ネガティブ本能』、『直線本能』、『恐怖本能』、『過大視本能』、『パターン化本能』、『宿命本能』、『単純化本能』、『犯人捜し本能』、『焦り本能』です。
それぞれの本能がどういうものかは、文字面だけ見ても何となく分かります。例えば、『分断本能』は、「ドラマチックすぎる世界の見方」をするせいで、何事も二項対立を求めることを言います。これは、どこかの元(!)大統領ではないですか。物事のネガティブな面に気づき易く「世界はどんどん悪くなっている」という思いから抜け出せない『ネガティブ本能』の持ち主は、周りにはいっぱいいます。本書を読んで、自身がどのタイプの本能に類型されるか、考えてみると良いでしょう。抑制するために、FACTFULNESSがどう役立つか、気づきを与えてくれるのです。故ハンス・ロスリングが、世界で活躍した衆衛生学者だったからこそ、説得力があります。
ただ、人の選択が、猿より劣ることを証明するテストについて言及がありますが、猿は強い意志を持っているわけでなないので、比較するのは如何なものかとは思います。
自分は、どんぴしゃりの『焦り本能』の持ち主です。本書では、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の例示がありますが、まさに昨今のような右肩上がりの疾病グラフを見て緊張が高まると、判断を誤る可能性が大。著者が述べるように、実はあまり深く考えておらず、なんとなく感じているだけなのです。
著者は、こう述べます。
好奇心があるということは、新しい情報を積極的に探し、受け入れるということだ。自分の考えに合わない事実を大切にし、その裏にある意味を理解しようと努めることだ。答えを間違っても恥とは思わず、間違いをきっかけに興味を持つことだ。・・・(略)・・・。好奇心があれば、いつも何か面白いことを発見し続けられる。
好奇心をもって、自分自身でよく考えよ、ということですね。
その他、興味を惹かれた文を引用しておきましょう。
いまや、世界のほとんどの人は中間にいる「西洋諸国」と「その他の国々」、「先進国」と「途上国」、「豊かな国」と「貧しい国」のあいだにあった分断はもはや存在しない
統計を読み解く際には、「数値の差が10%程度かそれ以下である場合、その差を基になんらかの結論を出すには慎重になるべき」と覚えておこう。
たしかに、環境破壊は世界中で起きている。だが、「巨大地震」のほうが「下痢」よりもニュースになりやすいことを思い出してほしい。
いまのベトナム人にとって「ベトナム戦争」は、ほかの戦争と比べたらそれほど大ごとではなかったのかもしれない
中国とインドが、地球温暖化の犯人であるかのように扱われているのは、わたしも正気の沙汰ではないと思っていた。
本書を読んでいると、見ている世界の広さによって、数値の意味合いは変わってくるように思えますね。10の本能を抱えている人々には、FACTFULNESSでアプローチしても耳を貸さないでしょう。本書は、あくまで自身のマインドセットを変化させるためのものなのです。
そもそも、自分は、数字が苦手で感性の方を重要視したくなります。これは、『文系本能』?