【本の感想】青木雨彦『課外授業 ミステリにおける男と女の研究』

1978年 第31回 日本推理作家協会賞 評論その他の部門賞受賞作。

青木雨彦『課外授業 ミステリにおける男と女の研究』は、海外ミステリ作品における男女の関係に着目したエッセイです。ミステリ・マガジンの1974年1月号から1976年12月号まで36回にわたって連載されたものだとか。

タイトルには”研究”と入っていますが、学術的なものではなくて、著者の視点で捉えた一つの意見でしょうね。このエッセイが発表当時は、新鮮だったのかもしれませんが、本書で取り上げられている作品が、今や殆ど知られていない作品(しかもほぼ絶版)で、おまけにあらすじが書かれていないので、読んでいても響いてくるものがありません。全て翻訳小説であることから、販売促進の位置づけであったのかもしれませんね。

自分が読んだことがあるのは、アイラ・レヴィン『ステップ・フォードの妻たち』(ニコール・キッドマン主演で映画化されました)、トニー・ケンリック『スカイジャック』(名作!)、ドナルド・E・ウェストレイク『強盗プロフェッショナル』(ドートマンダーシリーズ最高!)、ジョセフィン・ティ『時の娘』(確かに評判通りの名作)です。エッセイでは、男女の会話や仕草から、二人の関係性における機微を読み解き、著者の日常に置き換えて独自の評論を展開しています。自分の読んだことのある作品でも、忘れ去っている細かな点ではあるので、ピンとはこないのが難点です。

エッセイのフォーマットとしては、タイトル「小説『スカイジャック』における離婚の研究」のように、○○の研究をテーマとして掲げ、着目したポイントを抜き出し、考察するという形式です。導入部あたりも決まり文句があって、読み進めていくうちに飽きがくるのは否めません。著者の浮気願望(?)や、奥さんとの微妙な関係など昭和な男の独り言を読まされてもなぁ・・・と思います。今の世の中では、本書の語りっぷりに抵抗感を持つ女性が多いでしょう。

この手のエッセイは、旬という宿命があるのかもしれませんね。1970年代は、こういう風潮だったのか、と理解するに留めておくべきでしょう。日本推理作家協会賞は、たまに首を傾げたくなるようなものが受賞するんだよなぁ・・・。まぁ、それでも読み続けはするのですが。