【本の感想】福井晴敏『Twelve Y.O.』

福井晴敏『Twelve Y.O.』

1998年 第44回 江戸川乱歩賞受賞作。

福井晴敏『Twelve Y.O.(トゥエルブ Y.O.)』は、日米間に繰り広げられる謀略戦を描いた冒険小説です。

1997年『川の深さは』で江戸川乱歩賞受賞を逃し、翌年、リベンジを果たしたという、大沢在昌絶賛の作品がこれ。テイストは、『川の深さは』に似ていますが、スケールとアクションの派手さは本作品が上回りました。

自衛官 平貫太郎曹長は、少年らと悶着を起こし痛めつけれているところを、東馬修一と娘 理沙に助けられます。東馬は、平の元同僚で、命の恩人だったのです。今現在について多くを語らない東馬。平は、そんな東馬に苛立ちを感じます。

平は、ヘリコプターの名パイロットだったのですが、事故のトラウマでヘリコプターに乗ることすらできません。今や、新入隊員のスカウト係です。

ある日、平は、防衛庁情報局「ダイス」の夏生由梨、辻井護に拉致されます。夏生らは、東馬から理沙ことウルマを奪還せんと、東馬と接触した平を人質にしようと企てていたのです。案の定、東馬は夏生の罠へ飛び込んできます・・・。

本作品は、背景として沖縄から米軍が撤退したという設定です。米国を恐れさせたアポトーシスIIウィルス、《キメラ》計画、『BB文書』、『GUSOHの門』と謎のワードが頻出する本作品。実行者トゥエルブこと東馬の計画、それを阻止せんとする「ダイス」、複雑に絡み合う米国の思惑と、途轍もなくハードな内容です。読み進める度に、少しずつ明らかとなていく真相に快感すら覚えてしまいました。

戦闘少女ウルマの活躍で、救出された平。ウルマを慕う護が合流し、ここから、東馬と、東馬を抹殺せんとする米軍が入り乱れて、大いに盛り上がりを見せてくれます。

東馬が、真に米国を震撼させた秘密とは何か。東馬は、絶対に米国がYESと言わない条件を引っ提げて、取引を持ちかけます。いやいや、これは、本当に国家的な重大事ですの?東馬自身が、火薬庫の導火線の如き存在として描かれているけれど、それほど説得力はありません。加えて、東馬が決着を付けようとしていることが、国家を巻き込むほどなのかも疑問です。

とは言え、クライマックスからの怒涛の展開は無邪気に愉しめます。東馬とウルマらが、辺野古の米軍基地を攻撃する、壮大なアクションシーンが見ものなのです。迎え撃つは、米国安全保証局。そこに、「ダイス」も参入し、ハラハラドキドキの戦闘が繰り広げられます。米軍の秘密を開放しようとする東馬。阻止せんとする夏生が放った一言が、東馬の運命を決定します。ここは、ちょっとしたどんでん返しですね。ありがちな締めくくり方ではあるけれど。

本作品は、読了時に全てのワードの謎が明らかになり、満足感を得ることはできます。特に『BB文書』は、最初から要チェックです。ただ、東馬のモチベーションが、やっぱり腑に落ちないのですよ・・・