【本の感想】辛淑玉『怒りの方法』

辛淑玉『怒りの方法』

辛淑玉『怒りの方法』は、日朝鮮人である著者が、様々なシーンにおける怒りのあり方、そして怒りを表現する方法について著述したものです。

様々なシーンで怒りをおぼえる著者は、喜怒哀楽を人間の心のバランスをよく保つための装置であると考えています。感情表現は、人間性回復の第一歩であるとしながら、最も難しいのは「怒り」を表現する方法だと問題を提起するのです。

著者は、在日朝鮮人であるという生い立ちにふれ、怒りを封じ込めていた自身が怒れるようになったのは、自分の中に確固たる基準が年と共にできたからだと振返ります。

自らをよりどころに生きてきた結果、ブレなかった。だから、すべてに怒れるのだと述べます。

日本人は、耐えることが美徳という風潮があるように思います。あかの他人へ感情を露わにすることに抵抗を感じる人は多いでしょう。

本書では、著者の考える正しい怒り方が提案されています。それは、自分を肯定するところから生まれると主張します。この点には気づきを与えられたのですが、著者の怒りは、反骨精神に囚われ過ぎているようで、全面的に賛同しかねます。

「怒り」は武器にもなりますが、返す刀で自身を傷つけかねません。著者の精神的な強さは生来のものであろうから、考え方を理解できても自分が実践することはかなわないように思います。

アンガーマネジメントに関する書籍は読んだことはありませんが、怒りっぽいおじちゃんになったら不味いので、そろそろ手に取ってみようかな。