【本の感想】深谷忠記『札幌・オホーツク 逆転の殺人』

深谷忠記『札幌・オホーツク 逆転の殺人』

深谷忠記『札幌・オホーツク 逆転の殺人』は、数学者 黒江壮と雑誌編集者 笹谷美緒が探偵役のシリーズです。

タイトルがサスペンス劇場っぽいご当地ミステリは、ほぼ手に取らないのですが、どういうわけか本棚に積まれてたのが本作品。存在そのものがミステリなので、読んでみねばなりますまい。

坂本留美は、突然、振り込まれた500万円に戸惑っていました。アルバイト先の元副支店長 鳥海昌夫が、文学賞を受賞した賞金を無断で送金したのです。理由を聞こうとする留美に、鳥海は、クリスマスイブの再会を誓うだけで何も語りません。

やがて、藻岩山の麓で発見された焼死体が、鳥海であることが確認されます。警察は、鳥海が同年代の少年を、仲間三人とともに暴行死させ、特別少年刑務所に収監された過去を突き止めます。鳥海殺害の犯人として名前が挙がったのは、その仲間の一人竹之内。竹之内は、警察の張り込みの隙に、行方不明となり、死体として発見されるのでした・・・

事件の謎を解く黒江壮と笹谷美緒のこれまで活躍を知らないので、思い入れは皆無ですが、楽屋落ちのようなものが少ないので興を削ぐことはありません。ただ、自分は、(珍しく)メイントリックをあっさり見破ることができたので、ほぼ惰性で読み進めてしまったようです。

本作品の見るべきポイントは、謎解きよりも、入り組んだ人間関係を紐解いていく過程でしょうか。登場人物として捜査関係者がやたらと多くて、冗長さを感じさせるのはいただけません。

著者の読者層は、(自分のような)年配の方が多いのかもしれませんね。2000年刊行の作品としては、会話が今風ではないのです(古臭いといったほうが近いかも)。自分がタイトルから想像したとおり、旅のお供にぴったりのご当地2時間サスペンスドラマ的な作品ではありました。じっくりと味わいながら読むタイプの作品ではないでしょう。

何故、本棚にあったかは謎のまま。自分以外、家族は本を読まないからなぁ・・・