1957年から1995年までの5章からなる連作短編集で、その時々の世相を切り取ったかたちでストーリーは進みます。ひたすらヒトの暗い部分を目の前に開陳され、笑いがないから、どうにも疲れてしまいます。
【本の感想】戸梶圭太『燃えよ!刑務所』
戸梶圭太『燃えよ!刑務所』は、もし刑務所が民営化されたなら、というもしもの世界を描いた作品です。
刑務所の過剰収容問題に取り組むべく発足したその名も”刑務所過剰収容対策委員会”。委員の警察官僚OB 花菱城一郎は、瀕死の状態の時、天啓を得て刑務所の民営化に乗り出します。
63歳の花菱は、殺しても死なない男。立ち塞がる困難もものともせず、ゴリ押しで己の野望を成し遂げていくのです。金をばらまき、多くの愛人を抱えるという俗物中の俗物ですが、恐るべきバイタリティの持ち主。かの国の大統領を彷彿させるじゃありませんか!
花菱は、劣悪な環境で囚人たちを酷使し、民間の経営手法で刑務所を運営しようと試みます。狂暴な犯罪者同志のプロレスや、実際の囚人たちが命をかけたアクション映画を矢継ぎ早に企画していきます。
刑務所の民営化というワン・アイディアを、ぐいぐいと押し通す著者の力業を見よ!
カリカチュアライズされた役人のお偉いさんたちの痴態は、ちょいといき過ぎで、笑うに笑えません。花菱のぶっ壊れ具合は、ツボにハマるとウケるのかもしれませんが、自分はちょっと外してしまったようす。
エスカレートしていく花菱の要求。このハチャメチャには状況にどのような結末が待っているでしょうか。ここは読み進めながら期待が高まります。
そして、待ちに待ったラストは!ん、ん、ん、・・・御伽噺かい・・・
そう言えば、花菱に天啓を与えた天使のおっさんは、途中からぱったり出てこなくなりました。あのキャラは使い倒して欲しかっなぁ。
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