【本の感想】拳骨拓史『日本の戦争解剖図鑑』
明治から昭和にかけてを舞台にした小説を読むと、当時の社会情勢に理解が乏しいせいか、すんなり頭に入ってきません。戦国時代ならば、おぉ、こういう角度で攻めてきましたか!とか、ありがち~とか、感想を述べることはできるのですが・・・。ということで、拳骨拓史『日本の戦争解剖図鑑』を手に取ってみました。
本書は、日本の対外戦争について図解したものです。帯には”開国以降”とありますが、開国以前の対外戦争、例えば「白村江の戦い」、「元寇」、(秀吉の)「朝鮮出兵」についても記載があります。
一つのテーマ(戦争)について、解説、戦況図、データ、その時世界は、が一覧できる体裁で、資料として良くできています。小説を読む際に、ん?となったら、本書を引いて理解を深めるのが効果的でしょう。特に、戦況図は、戦闘において双方がどのような経路を辿って激突したかが一目瞭然です(イラストが秀逸!)。戦略を合わせて読むと、それが成果を上げた理由、または失敗した理由に納得がいくでしょう。データが語る戦力、戦死者からは、戦闘の規模が把握でき、近代日本の戦争が如何に無謀で恐ろしいものであったかが思い知らされます。
自分の苦手な「日清戦争」、「日露戦争」、「第一次世界大戦」の、発端や経過、結末は、本書を読んで(一旦は)理解できました。国内の権力闘争や無能な指揮官によって、取り返しのつかない事態を生んでしまいます。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言ったのは、ビスマルクですが、現代の各国のリーダーも、歴史に学んでもらいたいものです。
本書は、著者の労作に違いありません。武器や戦闘機、戦艦に関する知識は、賞賛に値します(自分が知らないだけ?)。巻末の年表は、眺めるだけで気が遠くなりそう・・・。
あとがきがの一文に、著者の思いが垣間見えます。
日本以外にも、米、英、中、ソ等すべての国に責任があり、多くの原因があるはずである。そしてその決断をした指導者の苦渋を、歴史を通じて学ぶ必要があるのではないか。
ただし、日本の戦争行為には、割と贔屓目でしょうか。ここは、異なる意見の書籍を読む必要がありそうです。
これで、司馬遼太郎『坂の上の雲』を手に取る準備ができました・・・が、いつ読み始めるかは予定がたたず・・・