【本の感想】ベゴーニャ・ロペス『死がお待ちかね』
1989年 週間文春ミステリーベスト10 国内部門 第5位。
1989年 第7回 サントリーミステリー大賞受賞作。
ベゴーニャ・ロペス(Begona Lopez)『死がお待ちかね』(La muerte es la que espera)は、中米を舞台とした異国情緒たっぷりのミステリです。
著者が、本国キューバから日本のサントリーミステリー大賞に応募した作品で、見事大賞を受賞しました。スペイン語の翻訳であることから、翻訳ミステリそのものですね。
老女テレサの絞殺死体が発見されました。警察は、捜査を進めていうちに、テレサ殺害に先立って、独身女性ソニアが撲殺されていること発見します。テレサが、ソニアの殺害を目撃したために口を封じられたのです。ソニアは妊娠のネタに、3人の男性に結婚を迫っていたらしい。
犯人は、3人の男性のうちの誰かか、それとも他の近隣住民なのか。難航を極める捜査。そして、第三の被害者が ・・・
本作品は、エリート一家マリブラン家の次女で生物学者のアドリアーナと、殺人犯の語りによって物語は展開します。殺人事件そのものは単純なので、興味の中心は、俗物的な登場人物たちの、ゆるゆるとしたシニカルな描写になるでしょう。
著者は心理学者のようです。
本作品は、つらつらと読み流していると、ラストのあたりで人間の心理に深く踏み込んだものであることに気付きます。分かり難い表現はあるのですが、独特の空気感を持った、味わい深い作品となっています。
なお、ベゴーニャ・ロペスさんは、サントリーミステリー大賞受賞の報を聞く前に逝去されたとのことです。
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