【本の感想】W・チャン・キム、レネ・モボルニュ『ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する 』

W・チャン・キム、レネ・モボルニュ(W.Chan Kim、Renee Mauborgne)『ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する 』(Blue Ocean Strategy : How to Greate Uncontested Market Space and Make the Competition Irrelevant)(2005年)は、競争のない「ブルー・オーシャン」を創造するための戦略行動を著したものです。

今となっては、誰もが耳にしたことのある「レッド・オーシャン」(競合が割拠する血みどろの世界ね)、そして「ブルー・オーシャン」ですが、その経営戦略としての方法論には理解が及んでいないかもしれません。自分も、”競争のない世界を創造”すれば、ビジネス的な優位性を確保できる、なんて当たり前じゃん!ぐらいの認識でした。

本書は、「第Ⅰ部 ブルー・オーシャン戦略とは」「第Ⅱ部 ブルー・オーシャン戦略の策定」「第Ⅲ部 ブルー・オーシャン戦略を実行する」の三部構成で、読み進めていくうちにブルー・オーシャンを創造するぞ!という根拠のない自信が漲ります。

「第Ⅰ部 ブルー・オーシャン戦略とは」は、ブルー・オーシャンのそもそもが語られ、第Ⅱ部、第Ⅲ部で詳説される事項の頭出しがなされます。ここでのキーワードは、「バリュー・イノベーション」でしょう。

ライバル企業を打ち負かそうとするのではなく、むしろ、買い手や自社にとっての価値を大幅に高め、競争のない未知の市場空間を開拓することによって、競争を無意味にする

これが、ブルー・オーシャンの土台であるとしています。納得の戦略キャンパス、四つのアクション、アクション・マトリックスは、フレームワーク好き(!)も納得でしょう。「増やす」、「付け加える」だけではなく、「取り除く」、「減らす」をアクションとしているのがポイント。シルクド・ソレイユの戦略キャンパスには、首肯せざるを得ません(今年は、予想外の出来事で残念なことになってしまいましたが)。

「第Ⅱ部 ブルー・オーシャン戦略の策定」は、戦略策定の原理原則を述べています。気になったものをいくつか抜き出してみましょう。

機能志向から感性志向へ、あるいは感性志向から機能志向へと転換を図ると、往々にして未知の市場空間が見えてくる

トレンドを予測するだけでは、ブルー・オーシャン戦略につながる知恵など、まず生まれはしない。そうではなく、トレンドが顧客価値をどう変えるだろうか、自社のビジネスにどう影響するだろうか、と知恵を求められる

なるほど、今までの視点をずらすことが肝要なんですね。さらに著者は、ブルー・オーシャン戦略の策定手順を提示してくれます。ステップを踏むと、チェックポイントをクリアしているか検証することができるのです。なるほど、そう易々と素晴らしいブルー・オーシャン戦略が作れるわけがありません。

「第Ⅲ部 ブルー・オーシャン戦略を実行する」は、冒頭から組織面のハードルについて述べられています。実行においては、一番高いハードルになるのは、どこの国も同じです。しかしながら、日本は失敗を許さない風土がありますから、本書のノウハウが通じるかは難しいところでしょう。結びの、「模倣を防ぐ」は示唆に富みます。せっかくのブルー・オーシャンも、他社の参入でいつ赤く染まるか分かりませんから。そして、いずれ戦略の刷新と・・・。安穏としてはいられないのです。