【本の感想】森治美『ドラマ脚本の書き方』

森治美『ドラマ脚本の書き方』

カルチャーセンターで人気がありそうな脚本教室。興味はあるものの、初心者マークを額に貼り付けて教えを請うのに、些か抵抗があります。カルチャーセンターに通うかどうかは別として、脚本の基本中の基本ぐらい知っておいて損はなかろうと、手に取ったのが森治美『ドラマ脚本の書き方』です。

著者は存じ上げなかたのですが、柏原崇、佐藤藍子 出演『イタズラなKiss』の脚本を担当されたとか。本書においても、実際の原稿が掲載されています。

本書は、テレビドラマにくわえラジオドラマの書き方の指南書です。なるほどとなる基礎知識が、惜しげもなく(!)述べられています。

限られた時間の中、劇的局面を展開させてそれを見聞きする人々の心を揺さぶるものがドラマ

と、著者は本書の冒頭で定義します。そこから、ドラマとして必要なこと、ドラマの構成を論じます。なるほど、実に明快です。ドラマを作るならコレを厳守する、を念頭に置くと、少なくとも自己研鑽することはできそうです。

では、脚本はというと、お作法を含めて実物が例示されており一読しただけで理解が進みます。人物表は、ビジネスでいうペルソナを定義と同じで、氏名、年齢、職業、バックボーンまで具体的に作り上げるとのこと。本篇の解説からは、映像でまたは音声で伝えるということが、小説(文章)とどのように違うか明確になります。

【柱】(<場所>や<時間>を示す)、【ト書き】、【台詞】の書き方、やってはいけない事柄、小説の地の文である心理描写をどう具現化するか、時間経過をつくるなど、納得することしきりです。オーディオドラマ脚本には【柱】がない、というのは言われてみれば、確かに。色々な制約の中で、テレビドラマ、ラジオドラマが制作されているのだと、知ることができました。

本書では、ひとつの作品に対して、ページを上下分割し、テレビとラジオで書き方の対比してみせてくれます。著者のキャリアの豊富さを感じさせますね。脚色についても触れられています。まぁ、ドラマを作る才能がなければ、書き方だけ分かっても良いものを書けるわけはないのですが。

本書を読んでテレビ、ラジオのドラマの見方(聞き方)が、多少なりとも変わったのは収穫です。公募原稿かぁ・・・老後の楽しみにとっておこう。