縁戚の結婚詐欺師の女に翻弄され続けられた女性弁護士の物語です。二十代から七十代まで、同い年の嫌な女の起こした様々な事件に関わります。不器用で堅物で孤独な主人公。自由奔放な嫌な女との関わりが、年齢ととも…
【本の感想】桂望実『Lady,GO』
桂望実『Lady,GO』は、生活苦から逃れるためにギャバ嬢として働き始めた女子の成長物語です。
タイトルからポップな内容を期待しましたが、水商売の裏っ側が描かれていてシリアスな展開です。
派遣社員の南玲奈は、恋人からいきなり別れを切り出され、次の派遣先も決まらないまま。生活の困窮が目に見えている中、派遣先で知り合ったえみりから、キャバクラの体験入店(タイニュー)を勧められます。二万円のキャッシュに釣られたものの、向いていないと落ち込む玲奈。そんな玲奈に、偶然出会った同級生の薫の姉 泉から声を掛けられます。泉は、自身が勤務する六本木のキャバクラを紹介します。いよいよ金に困った玲奈は、再びタイニュウーに挑むのでした・・・
店長の羽田、ヘアメイクの京子、スタイリストのケイ、泉こと源氏名 美香と、登場は皆、プロフェッショナル。キャバクラの舞台裏の職業人らのプロ根性を垣間見ることができます。如何にして指名を取るか、如何にして同伴させるか、といったテクニックが開陳されていて、その道のノウハウ本のような趣です。殆ど女性のいる夜の街関連にはいかない自分ですが(娘のようなコと飲んでもちっとも愉しくない)、ノウハウやプロセスを微に入り細を穿つが如く語られると興醒めです。ここは、冷静に接客業としてのあるべき姿をビジネスとして読むべきでしょう。
ケイのステレオタイプなゲイ キャラクターには鼻白みますが、玲奈のメンターとしての立ち振る舞いには見るべきものがあります。
本作品では、夜の女性ならでは鞘当てや、同業者に対する威嚇的な対応などブラックな面も描かれていて、きれいごとでは済まない世界を見ることができます。優男風の羽田の強面の一面には、少なからずショック。
玲奈は、徐々に接客業で力を付けていきます。そして、自分で人生を切り拓こうとするのです。ラストにかけては、ワクワクすべきなんでしょうね。本作品の、パッとしない女性が、水商売の経験を積むことによって輝き始めるというのは想定内。自身の成長に比して、周りが色褪せて見えるあたりの見せ方は上手ですね。
ただ、残念な事に、主人公が女性だということを抜きにしても、心の持ち様に共感できませんでした。
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