【本の感想】シャーリン・マクラム『暗黒太陽の浮気娘』

シャーリン・マクラム『暗黒太陽の浮気娘』(原著)

1988年 エドガー賞 ペーパーバック部門 受賞作。

シャーリン・マクラム(Sharyn McCrumb)『暗黒太陽の浮気娘』(Bimbos Of The Death Sun)は、何といっても邦題が秀逸!。読む前からワクワクさせてくれるネーミングです。

しかし、本編の方はというと、タイトルのインパクトが強いだけに、拍子抜けの感が否めません。

SF大会<ルビコン>に参加した、新米作家ジェイ・オメガと、彼の恋人マリオンは、著名なファンタジー作家アッピン・ダンギャノンの殺害事件に巻き込まれます。アッピン・ダンギャノンは、ファンの間でも有名な、劣悪な性格の持ち主でした。密かに恨みを抱いている人物は、多いのです。

混乱に混乱を重ねる、大会会場。

そんな中、ジェイ・オメガは、テーブルトークRPG ダンジョンズ&ドラゴンズを開催して犯人をあぶりだそうと試みます・・・

本作品は、殺人事件の発生から解決に至るまで、ごくごく単純にストーリーが展開します。見るべきは、”アメリカンおたく”の生態ということになるでしょうか。このあたりに興味がないと、全く面白味を感じないでしょう。

アッピン・ダンギャノンの強烈な個性や、それを取り巻くファンたちの壊れっぷりは、なかなか楽しく読めます。もっとも、おたくが市民権を得て久しい今となっては、新鮮味は少ないのですよ。懐かしのD&D等、放り込んでいるマニアックなSF作品や、用語の数々も色褪せてしまっています。発表当時ならば、ツボにハマったかもしれませんね。風刺を効かせているのでしょうが、時代の徒花になってしまいました。

ちなみに、「暗黒太陽の浮気娘」は、工学博士であるジェイ・オメガが不本意ながら命名された処女作のタイトルです。本編とどういう関係があるのやら、読了してもさっぱり分からなかったよ・・・

(注)読了したのはミステリアス・プレス文庫の翻訳版『暗黒太陽の浮気娘』で、 書影は原著のものを載せています 。