【本の感想】ジル・マゴーン『パーフェクト・マッチ』

ジル・マゴーン『パーフェクト・マッチ』

ジル・マゴーン(Jill McGown)『パーフェクト・マッチ』(A Perfect Match)(1988年)は、シリーズ・キャラクター デイヴィッド・ロイド警部とジュディ・ヒル部長刑事の初登場作品です。

やもめ熟年男デイヴィッドと、夫との仲がぎくしゃくしているジュディとの危うい関係(というか不倫関係)が、シリーズの特色のようですが、こういうバディものはいただけません。デイヴィッドとジュディがどんなに正義を訴えても、不貞行為をしている二人なので、説得力がないのです。万引きは犯罪だけど、不倫はいいよね(仕方ないよね)という、女性目線の恋愛至上主義には辟易してしまいます。

自分は、おそらくこのシリーズを読み続けることはないでしょう(シリーズ13作品のうち、本作品と、『牧師館の死』『踊り子の死』の3作品みが翻訳されています)。

内容の方はというと、これまたさして見所がありません。なにより、デイヴィッドとジュディ主役二人の冴えが感じられないのです。

デビュー作である本作品と、本格ミステリの傑作『騙し絵の檻』を比較してしまうのは酷いけれど、ミステリとしての面白みにも欠けているように思います。

莫大な遺産を相続した未亡人ジュリア・ミッチェルの全裸死体が、発見されました。容疑者は、前夜ジュリアと一緒にいたクリス・ウェイド。逃亡の末、逮捕されたクリスは、圧倒的に不利な状況ながら、デイヴィドとジュディに無実を訴え続けます。ジュリアとクリスは初対面だったのです。クリスに対する疑惑を拭いきれぬまま、デイヴィドとジュディは、その時現場付近に居合わせた者たちの証言を丁寧に集めます・・・

ジュリアには暴行の形跡がないにも関わらず、何故、下着が散乱し全裸なのか、が謎として提起されています。これが、事件解決に結びつくのだけど、サプライズとはならないのが残念です。

真犯人を含め、どろどろ不倫関係が事件の真相に深く関与しています。なんとも不快な展開でウンザリしてしまうというのが正直なところ。自分は、聖人君子なわけじゃないけど、いい大人の淫蕩さを見せ付けられたみたいで後味が悪いなぁ。