【本の感想】山田悠介『スイッチを押すとき』

山田悠介『スイッチを押すとき』

2030年 日本政府は、自殺者の増加を食い止めるため、青少年自殺抑制プロジェクト(YSC)を発足させます。このプロジェクトは、ランダムに選ばれた子供に高ストレスを与え、その経過を観察するというものです。子供たちは、5歳になると心臓に機械を埋め込まれて、10歳で両親の元から離され施設に入れられます。

自由を奪われた孤独な生活から逃れるには、渡されているスイッチを押して心臓の機械を動作させ、自ら命を絶つしかありません。YSCの監視員 南洋平は、転勤先の施設で4人の実験体 高宮真沙美、新庄亮太、小暮君明、池田了と出会います。殆どの子供たちは、施設に入れられ程なくしてスイッチを押しますが、彼らは奇跡的に17歳まで生きていました。洋平は、そんな彼らと触れ合ううちに、力になりたいと思うようになるのです・・・

山田悠介『スイッチを押すとき』は、冒頭から、命の大切さ、生きることの意味を謳い上げるタイプの作品かと想像しました。しかし、これは、全くハズレてしまいます。

洋平は、自身の処分を顧みず、4人それぞれの望みを叶えるべく行動するのですが、彼らを次々に死に至らしめてしまいます。行き当たりばったりの行動に、高尚な理念は見られません。自分が本作品に入り込めなかったのは、自死する子供たちの悲哀を描いているものの、そこにあざとさを感じてしまうからです。

なぜ、4人だけが特殊なのか。
なぜ、洋平は、彼らだけに熱意を持って接するようになったのか。

この疑問は読み進めながら常につきまとってしまいました。

子供たちと施設を脱出した洋平が辿り着いた先には、ちょっとしたサプライズが待っています。ここは、良いのだけれど、どうにも救いのない結末で、後味はよろしくありません。(洋平の携帯電話の利用を知って、場所を特定できない国家機関ってどうよ?っていうツッコミどころもありますね)

本作品は、中学生ぐらいがターゲットの作品でしょうから、生きることの意味について、きっちりと描いて欲しいところです。

本作品が原作の、2011年 公開 小出恵介、水沢エレナ 出演『スイッチを押すとき』はこちら。

2011年 公開 小出恵介、水沢エレナ 出演『スイッチを押すとき』

本作品が原作の、2006年 放送 成宮寛貴、木南晴夏 出演 テレビドラマ『スイッチを押すとき』はこちら。

2006年 放送 成宮寛貴、木南晴夏 出演 テレビドラマ『スイッチを押すとき』

本作品が原作の、2006年 公演 永山たかし、肘井美佳 出演 舞台『スイッチを押すとき〜君達はなぜ生きているんだ?〜』はこちら。

2006年 公演 永山たかし、肘井美佳 出演 舞台『スイッチを押すとき〜君達はなぜ生きているんだ?〜』

映画、ドラマ、舞台と・・・おやおや、人気のある作品のようですね。