【本の感想】井上理津子『さいごの色街 飛田』

井上理津子『さいごの色街 飛田』

井上理津子『さいごの色街 飛田』は、現存する大阪の遊郭、飛田新地のレポートです。街そのものが特殊な業態の集まりであるがゆえ、撮影厳禁、取材拒お断りとなるようです。著者が12年通い続け、ついに書き上げた渾身の一冊というのがアピールポイント。

小説ではないので、街に漂う情緒は感じられません。これは仕方がないとして、掲載されている写真も少ないし、いまいち男性が魅了されるわけが伝わりにくいですね。女性目線の限界なのでしょうか。現地に行かなくても、書かれていることが想像できる範囲内なのです。

確かに取材は難しいのだろうけれど、取材方法については疑問符が付きます。どこか興味本位というか、真摯さに欠けるように思えるのです。あとがきを読むと「客として、お金を落としに行くならいい。そうでなく、物見にならば、行ってほしくない」とあるので、思い入れはあるのでしょう。

いちばん抵抗があるのは、身分を詐称してインタビューを試みるあたりです。それだけ、ハードルが高いのだと言いたいのかもしれませんが、ジャーナリストとしてどうなのでしょう。本書の真実味を疑いたくなってしまいます。

著者は、肯定でも否定でもないというスタンスをとっています。でも、「おかしいですよね」といったニュアンスで警察署にねじ込むのは、どうみても否定的な態度のようです。これはインタビューのテクニックなのか?当然、こういったクレームにはお役所も馴れてるのはずで、教科書的な回答になります。このくだりは、取材に協力してくれた飛田の方々も首を捻ってしまうのではないでしょうか。

本書は、ここに働くおねえさんたちの頭の数だけ不幸があるという印象をあたえます。インタビューに答えてくれる人が少なく、答えてくれても真実かがわかりません。12年をかけているのに、なにせデータが集まらないのです。これだと、ステレオタイプな結論しか出ないでしょう。

結局、本書は何を言いたかったのか。街の魅力、ここに暮らす人々の生き様、フェミニズム、悲しい男の性 ・・・

飛田の遊郭としての歴史は興味深く読めました。ここは、資料をまとめただけではあるのだろうけどね。