【本の感想】西村京太郎『都電荒川線殺人事件』

本の感想 西村京太郎『都電荒川線殺人事件』

再放送を含めて2時間ドラマを、よく見ています。

単身赴任を経験してから、その傾向が強くなったような気がします。ありえない設定を、堂々とドラマにしてしまう制作者の心意気をみよ!わざとツッ込み所を残してくれているとしか思えません。まさに、孤独なおじさんのワンダーランド。

2時間ドラマの王様と女王様といえば、西村京太郎と、山村美紗です。

いつも「紅葉でたー!」とひとり歓喜してしまうのだけれど、原作の方はまったくといっていいほど読んではいません。特にトラベルミステリーは、手を出しに難いのです。小さな文字が見えずらいゆえ、時刻表が大敵です。

帰省した折、手持ちの本がなく、母親が持っていた西村京太郎『都電荒川殺人事件』を読んでみました。そういえば母親も2時間ドラマが好物。

本作品は、雑誌『旅窓』のライター青木亜希子が主役の、連作短編集です。昭和五十九年に雑誌連載されていた、全8話が収録されています。

初版のサブタイトル「旅と恋と殺人と」の通り、旅して恋して、おまけに殺人事件に巻き込まれるという、2時間ドラマ的ワンダーランドが展開されていきます。よくもまあ、一般人が”たまたま”殺人事件に巻き込まれるものだ、というヤボなことを言ってはいけません。眼鏡に蝶ネクタイの小学生だって、毎週大変なのですから!

本作品は、2時間ドラマ的ツッ込み所が、しこたま用意されています。

「うそ~ん」

これが、途轍もなく楽しい。

青木亜希子が取材するのは、都電荒川、十和田、四国巡礼、宮崎、修善寺、祇園、サロベツ、信州です。旅の風物詩については、さすがトラベルミステリーの巨匠、お見事!岡本綺堂の『修善寺物語』など、ご当地所縁のものをしっかりと紹介しており、お勉強になります。凝りに凝った殺人トリックとは無縁の、まさに旅のお供のような連作短編集です。何より、時刻表が載っていないのが目に優しくてよい!

なお、「第二話 十和田南への旅」、「第八話 白樺心中行」には、十津川警部(ワタセ または ヒデキ または マサノブ・・・)が、ゲスト出演します。

そういえば、青木亜希子役が、友近というテレビドラマ版がありましたっけ。イメージにギャップがあるのも、2時間ドラマの楽しむポイントなのです。多分・・・

(あらすじは、ワンダーランドの舞台裏を見せてしまうので書きません)