【本の感想】アーサー・メイリング『ラインゴルト特急の男』
ラインゴルト (Rheingold) はオランダとドイツ南部、スイスなどを、ドイツのライン川沿いを経由して結んでいた昼行の国際列車である。1928年から第二次世界大戦による中断を挟んで1987年まで運行されており、1965年からはTEEの一列車でもあった。1951年から1954年まではラインゴルト急行 (Rheingold Express) という名称だった。
wikipedia
1980年 エドガー賞 長編賞受賞作。
アーサ・メイリング(Arthur Maling)『ラインゴルト特急の男』(The Rheingold Route)は、ヨーロッパを股にかけた追跡劇です。
元アメリカ財務省職員ジョン・コクラン(本名スティーヴ)は、不幸な夫婦生活、それに続く娘の死から身を持ち崩し、現金の運び屋をやるまでに落ちぶれていました。ある日、弁護士マイケル・ガーウッドからコクランへ、新たな依頼が持ち込まれます。それは、35万ポンドを、英国から途中大陸横断鉄道<ラインゴルト>に乗り、ジュネーブへ持ち運ぶこと。弱みを握られているコクランは、報酬3千ポンドで渋々承諾します。
本作品の冒頭からは、やさぐれ男が、ある事件をきっかけに再生する、そんな結末の匂いがプンプンです。かの国は、しくじりからの立ち直りを描いた作品が、ウケるんですね。
コクランに仕事を依頼したガーウッドですが、一方では、ケネス・オーロクにコクランから金を取り戻すように依頼を出します。オーロクは、異常者という設定で、キレっぷりはなかなか。この二股のハテナ?が、本作品の肝です。
ここから、コクランとオーロクの視点が交互に切り代わって、ストーリーは進みます。
追われる男コクラン、追う男オーロク。キレっキレのオーロクなので、コクランを生かしておくわけはありません。コクランは、追われているとは露知らず、英国で再会したルース・ワッツとラブラブです。なんと、本作品の主人公は、物語の半分まできても旅立たないのです・・・
オーロクは、コクランを付け狙い、ドイツ、英国を転々しながら行き掛けの駄賃とばかりに殺人を犯します。コクランが魅力に乏しいだけに、オーロクの異常さには目を引かれます。
あちこち右往左往した挙句(ほぼオーロクが右往左往してるのですが)、ついにコクランとオーロクは対峙します。本来なら、クライマックスですが、思ったような展開にならず、どうにも盛り上がりません。邦題にあるラインゴルト特急に、ほとんど乗らないし・・・
辛くもオーロクから逃れたコクランは、一路、オランダにいるルースの元へ。一方、オーロクは、殺人を重ねながら(みんな殺しちゃうのね)、猟犬、否、狂犬の如くコクランを追い詰めて行きます。ついに、正面対決を迎えたコクランとオーロク。何故、ガーウッドはオーロクにコクランを追わせたのか、事の真相はここで明らかになります。そして結末は・・・
本作品は、せっかくオーロクのような良い味(?)のキャラを創り出しているのに、ハラハラ感がほとんどありません。予想通りではあるものの、締めくくり方は甘ったるいものになってしまいました。
エドガ―賞受賞作ねぇ・・・ この○○サスペンス劇場ヨーロッパ版の何が良かったんだろう。
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