【本の感想】生垣真太郎『フレームアウト』

生垣真太郎『フレームアウト』

2003年 第27回メフィスト賞受賞作。

生垣真太郎『フレームアウト』の舞台は、1979年のニューヨーク。

映画編集者のデイヴィッド・スローターは、編集スペースから覚えのない16ミリフィルムを見付けます。そこに映っていたのは、女優アンジェリカ・チェンバースが、自らの身体をナイフで刺す姿でした。

これは、本物のスナッフフィルム?

デイヴィッドは、友人ダイス・ソノダ、ケリー・ウォレス、探偵ミック・ロジェの力を借りフイルムの謎を探り始めます。アンジェリカ・チェンバースはどこに。そして、行方不明となったケリー・ウォレスの姪 同姓同名のアンジェリカ・チェンバースとの関係は何なのか・・・

デイヴィッドの暗い過去とシンクロするように、ストーリーは展開します。

本作品は、実は、あらすじを書くのがとても難しいのです。それは、プロットに巧妙なミスリードをするような仕掛けが埋め込まれているから。ありがちなサイコスリラーを逆手に取って、巧みに読者を迷路に誘い込んでしまいます。発端となった出来事の顛末より、騙し絵的な展開に妙味があるのでしょう。ただし、こういうトリッキーさは、好き嫌いが分かれてしまいそうではあります。

1979年当時の映画産業や、映画の作り手の内幕が詳細に描かれていて、自分にとってはこれが何より興味を惹かれました。翻訳ミステリ風のあざとい書きっぷりが多少嫌味ではあるのですが、映画に関する薀蓄で相殺してしまいましょう(もっとも、翻訳小説は、本作品のようにやたらと横文字を挿入しないけれど)。映画に関しての門外漢に、ちょっとした知識をくれたのだから。

さて、タイトルのフレームアウトとはなんでしょうか。

本作品には、フレームという語が頻出します。映画のシーンのように、主人公の心象風景として投影されるものをフレームという言葉で表しているようです。そうすると、フレームアウトとは意識の枠組みから外れてしまったもののことでしょうか。

なるほど・・・と、自己解決してしまうわけです。