【本の感想】夏樹静子『わが郷愁のマリアンヌ』
1986年 週刊文春ミステリーベスト10 国内部門 第9位。
自由と解放感を求め、英国・クラウチ商会の支配人として単身赴任した若き常務 倉内優二。着任早々、一目で気に入った陶磁器メーカー クィーン・フォーブスの輸入代理店となるべく、セールスマネージャ グロブナーとの交渉を開始します。
契約締結を進める一方、優二は、クィーン・フォーブスのオーナー マリアンヌにエミリー・ブロンテ 『嵐が丘』のキャサリンを重ねあわせて、心惹かれていくのでした。
つのる想いに煩悶し、マリアンヌとそっくりなダンサー ルイーズに代替えを求めるようになる優二。
そんななか、グロブナーが何ものかに殺害されてしまいます。警察の調べで、グロブナーは、当時12歳のマリアンヌを誘拐した犯人であることが明らかになって ・・・
夏樹静子『わが郷愁のマリアンヌ』は、あらすじだけでお終いまで語ってしまうと”そんな馬鹿な話しがっ!”なのですが、読んでいると不思議と納得してしまいます。真相はこうだろうと予測はつくので、興味の中心は、やはりこの納得性をどう与えてくれるかですね。
前半は、英国の風物やら、陶磁器業界の話やらで、つまらないわけじゃないけれど、モタモタした感じを受けます。ところが、後半は決着つけ方が知りたくて、イッキ読みになってしまいました。
英国という舞台装置そのものが、うそーん!なプロットを、そういうこともあるよね、という気にさせてしまうのでしょうか。高校生の頃感銘を受けた『嵐が丘』のオマージュのようでもあり、その分、贔屓目に見てしまったのかもしれません。
ただ、実はこの人も仲間でした!ってところだけは肩透かし気味で残念です。本作品を読んでいると、男ってダメねとつくづく思ってしまいます。著者が、そのあたりよ~くわかってらっしゃるということなんでしょう。
そうそう、『嵐が丘』を読んだのは、ケイト・ブッシュ『嵐が丘』(Wuthering Heights)がきっかけでした(バラエティー番組「恋のから騒ぎ」のオープニングテーマですね)。これまた、本の世界にピッタリな楽曲です。
Heathcliff、it´s me–Cathy.
Come home.I ´ m so cold!
Let me in-a-your window.
“Wuthering Heights” song by Kate Bush