【本の感想】河合雅司『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』

河合雅司『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』

2018年 ビジネス書グランプリ 10位。

少子高齢化社会。

日本の社会課題の筆頭といえば、このワードでしょう。ふと気付いてみれば、自分の職場はおっさんを通り越し、初老といわれる男性ばかり。これは何としたことか、と社内の読書会で選定したテーマ本が、河合雅司『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』

本書は、様々な統計数値から、これからの日本を占うものです。

タイトルの通り、「このままだと日本はこんな未来が待っている!」という予想を、年表として表しています。例えば、「2020年には女性の二人に一人が50歳以上」「2025年 東京へ高齢者が流入し新たな社会混乱」「2039年深刻な火葬場不足」「2115年日本の総人口5055万5000人」というように、定量的な根拠を上げながら来るべき世の中を詳説していくのです。

少子高齢化の影響が加速度的になっている現実を数値として再認識しつつも、これはホラーか!というぐらいの衝撃的な内容に、唖然茫然です。労働の問題、大学の問題、企業経営の問題等々を取り上げ、その根拠なるデータを提示するのですから、強烈な説得力があります(感情的には納得したくはないのですが)。

少子高齢化とは、これまで「当たり前」と思っていた日常が、少しずつ、気づかぬうちに崩壊していくことなのである。

著者は、少子化と高齢化は別の問題と主張します。言われてみれば、漠然と因果関係があるものとして捉えがちです。一緒くたに論じてしまって、誰もが本質を見失っているのでしょう。ここは、ご指摘の通りです。移民対策は即効性がない、移住はパイの奪い合い、という主張も納得できます。

本書は、より悲観的な方の未来予想図を描いているのだとは思います。そうでなければ、「では、打ち手は何か?」という、著者の主張が効いてきませんから。さてさて、待ったなしの深刻な未来に向けて、著者は、どういう提言をするのか。実に興味津々です。

なるほど、「コンビニに代表される24時間のサービスを享受するのを諦める」、「街をコンパクト化して人々の暮らしを集約する」といった処方箋は、共感することができます。

「20世紀型成功体験」とは決別するときなのである 。

今までごく当たり前としてきた快適さを、これからは我慢していくしかないのです。実際に、そうなりつつありますしね。ただ、コンパクト化は言うは易しで、地方に根強い地縁から脱却するというハードルがあります。人々の意識の変革が必要です。その他の著者の提言は、悲惨な未来を回避する策としてピンとはきませんでした。もう少し時間が経てば、実感するでしょうか。

本書は、誰が読んでもお先真っ暗感にとらわれるはずです。自分は平均寿命からいって、せいぜい30年後ぐらいしか目にすることはできません。その先の事は心配してもなぁ、とついつい思ってしまうのですよ(それが、アカンのだって言うよね?)。