【本の感想】清涼院流水『コズミック 世紀末探偵神話』

清涼院流水『コズミック 世紀末探偵神話』

1996年 第2回 メフィスト賞受賞作。

1200個の密室で、1200人が殺される

密室卿と名乗るものから、マスコミ各社、警視庁、そして日本探偵倶楽部(JDC)へ、犯罪予告状が送り付けられます。程なくして、密室状態の中、首を切り落とされた死体が、各地で発見されるようになります。死体の背中には、殺人の順番と符号するような漢数字が。被害者たちや、殺害現場に関連性はありません。パニックに陥った日本国民の期待を背に、JDCの面々は、この不可能犯罪に挑みます・・・

清涼院流水『コズミック 世紀末探偵神話』は、著者が言うところの大説だけあって、とっても長い(長ったらしい)ミステリ(?)作品です。

全700頁の前半は、密室状態で殺害される被害者たちの状況が、縷々語られていきます。捜査にあたる警視庁の捜査担当者や、JDCのメンバーが殺害されるに至って超常現象の雰囲気さえ漂います。まさに究極の不可能犯罪です。しかしながら、この繰り返される描写に飽きがくるのは否めません。

事件は、イギリスの連続切り裂き魔との関連性を帯び、さらには、二百年前からの歴史に閉ざされた謎へと広がりをみせます。空間を、時間を超えた大風呂敷。JDCの異能の探偵たちはどのように解決をしていくのだろうと、読んでいる方が風呂敷の畳み方を心配してしまいます。

どう決着を付けるのか、だけを楽しみに、この長い長い物語を読み進めたのですが、全くの予想外に持っていかれました。ミステリとして読んでしまうと、何とも虚しい気持ちに襲われます。なるほど、メフィスト賞ならでは、ではありますね。

JDCの名探偵たちが、異能のわりにちっとも推理の冴えを見せないのが、がっかりポイント(特に、総代の鴉城蒼司は、ぱっとしない)。舞城王太郎のJDCトリビュート『九十九十九を読んでは見たものの、本家に輪をかけて一筋縄ではいきませんでした。(リンクをクリックいただけると感想のページに移動します

本作品が原作(なのか?)の、蓮見桃衣 画『コズミック・コミックス』はこちら。表紙は、九十九十九ですね。

蓮見桃衣 画『コズミック・コミックス』