【本の感想】本谷有希子『グ、ア、ム』

本の感想 本谷有希子『グ、ア、ム』

8年ほど前、家族でグアムを訪れました。

娘がでかい魚に齧られ骨が折れそうな負傷したり、ホテルのトイレをつまらせて大騒ぎになったり、突然の雨に観光スポットでずぶ濡れになったり、子供らは食事が口に合わずバーガーキングとドリトスを主食にしたり・・・、という5日間。ハラハラ、イライラ。家長として責任感ゆえの苦悩と面倒の日々で、家族旅行を愉しむ余裕はありませんでした(そもそも、自分の器が小さいだけなんですが)。

本谷有希子『グ、ア、ム』は、堅実な妹、ゆるゆるの姉、二人の間で右往左往の母、女性三人のついていないグアム旅行の数日間を描いた作品です。自分のグアム旅行と、何やら似ています。

幼い頃から決して仲が良いわけではない4つ違いの姉妹は、長じてからもシラケ切ったような冷戦状態。せっかくの海外旅行の上手くいくはずがなく、くわえて行く先々で散々厭な目にあうことになります。

グアムのころころ変わる天候。険悪な関係を後押しするように、姉妹の間の湿度もどんどん上がっていきます。この鬱陶しさ、うむうむよ~く分かります。イライラ・・・

そんなテンションだだ下がりの女三人旅は、著者の手によって、なんとも笑えるお話に仕上がっているではありませんか。タイトルが「グアム」ではなく、「グ、ア、ム」なところにtake it easy感が出ています。

あちこちにばらまかれた小さなエピソードが、肝心なところでピリっと効いてくるような細やかさに感心してしまいました(とくに、時計のいらずらのくだりです)。ちょいちょい顔を出す、一人実家に居残りしている父のボケのかましかたも微笑ましいですね。三人のすったもんだを経たラストは、ささやかなシアワセを感じましたよ。家族ってどこかで妥協点を見つけたり、問題の解決に向けてしぶしぶ力をあわせたりするものです。

苦悩なんて誰にでもできるということに気づいて、じゃあもうそういうのは他の人に任せようと目をつぶった。そうだ、苦悩なんて誰にでも、できる。

そうそう、苦悩とか面倒なんて自分だけでしょい込む必要はないのです。