【本の感想】梅田悟司『「言葉にできる」は武器になる。』

梅田悟司『「言葉にできる」は武器になる。』

梅田悟司『「言葉にできる」は武器になる。』は、ちらりと目を通したところ、またまた似たようなコミュニケーションに関する売れ筋(!)の自己啓発本かと思いました。ところが、よく読むと、言葉を自分の中で熟成するプロセスなど精神論に終わらない主張が述べられていて、フムフムとなります。

著者は、言葉を生み出す二段階として、①内なる言葉で意見を育てる、②外に向かって変換する、を定義し、その中で①が重要であると述べています。血肉となった言葉が、説得力を持つことは自明です。その思考法を含めたHOWが本書のポイントであり、他の同様の書籍と一線を画しているのです。ココは、帯の”社会人の新しいバイブルだ!”は大袈裟ではあるとしても、役には立つでしょう。

1人の時間を確保し、自分の感情を振り返り、どんなことを考える傾向にあるか把握するところから始めよう、と著者は言います。自分を客観視することが出発点なんですね。簡単そうで、これはなかなか難しい。大人になればなるほど、自分自身には甘いですから。自身に対して残念なことは、記憶を葬りがちです。

思考を内なる言葉と捉える、内なる言葉を俯瞰した目線で観察する、言葉の解像度をあげる、思考のサイクルをインストールする、T字型思考法など、とてもキャッチ―な表現です。”言葉にできる”をそのまま著しているのでしょう。セレンディピティ(求めずして思わぬ発見をする能力)という語は、本書でお初にお目にかかりました。

訓練のない個性は、野生にすぎない 。

1人に伝わればみんなに伝わる 。

体験の幅を広げることが、動詞の幅を広げることにつながる 。

断言は人々を導く旗になる 。

なるほど、端的な言葉でズバリと本質をついていますね。 「○○って、○まるだ」で、新しい名前をつける技(?)は、言葉にこれまでにない意味を発見する方法として新鮮です。

内なる言葉に幅と奥行きをと持たせることが、よく考えることの正体である 。

ここが本書のキモでしょうか。

しかしながら、リーダシップ論にも言及し話題が広がっているにもかかわらず、タイトルの武器って何?をきっちりと著している箇所がなかったように思います。