【本の感想】森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』
2007年 第20回 山本周五郎賞受賞作。
森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』は、おっさんが触れてはいけない系の作品と思っていました。女子に大人気ですからね。女子と「モリミーのオモシロ系ってさぁ」なんて会話は想像がつきません。
しかし、本好きたるもの食わず嫌いはいけませんね。克服してこそ華でございます。
結論から言ってしまうと、本作品、幼い頃の子供らとクレヨンしんちゃんの映画を観たおしている自分としては、赤面することなく”オモチロイ”恋愛ファンタジーと公言することができます(この”オモチロイ”は、口に出すととても恥ずかしいのですが)。ハテ、どこがオモチロイのか?オモチロイことを言語化できないオモチロさがあるのです。脳内で映像の花が咲くというか。
本作品は、連作短編の形式で、恋する男子大学生”先輩”と恋される(?)女子大学生を中心に恋が走り出したら♪系の物語です。因果は巡るよ糸車、いくつかの出来事や登場人物たちが、発散するがごとく次々に関わりを持ち、ラストに気持ち良く収斂していきます。あそこのあんなシーンがここにつながって・・・、と伏線を回収していくが如くの快感を味わえます。その分、恋愛小説としての味わいは薄口でしょうか。
プロットの妙味に加えて、スピード感が良いですね。クレヨンしんちゃんで言うところの野原一家が、爆走しているイメージです。
キャラの立っている登場人物が入り乱れるのも、本作品の魅力です。中でも”先輩”が恋する、鯉を背負って達磨の首輪飾りをした女子が秀逸。イノセントキャラが、とってもキュート。和装の女神様とでも言いましょうか。
現実を保ちながら、ちょっと異質な世界が入り混じる。誠に勝手ながら京都って、こんな事が起こりそうなファンタジーの似合う街だと思います。
と、無事、 森見登美彦作品を克服しました。早く読めばよかった・・・
本作品が原作の、2017年公開アニメ化作品 『夜は短し歩けよ乙女』 はこちら。
本作品が原作の、琴音らんまる画 漫画『夜は短し歩けよ乙女』はこちら。表紙を見ただけでもイメージが違うのですが・・・
ちなみに、同年代の本好きなおっさんらは、意外にもこっそり読んでいるようですぜ。