【本の感想】ジェフリー・ユージェニデス『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹 』

本の感想 ジェフリー・ユージェニデス『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹 』

ジェフリー・ユージェニデス( Jeffrey Eugenides) 『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹 』(The Virgin Suicides)の 舞台は、1970年代ミシガン州の田舎町(らしい)。

リズボン家の5姉妹 テレーズ(17)、メアリイ(16)、ボニー(15)、ラックス(14)、セシリア(13)は少年達の憧憬のまとでした。ヘビトンボが空を茶色く染める6月、リズボン家でひらかれたパーティの最中、セシリアは投身自殺を遂げてしまいます。

本作品は、少年達の一人=ぼくが、20年を過ぎて、当時の人々の証言などから物語として再構築をした体裁になっています。セシリアの自殺から、4人の姉が尽く命を絶ってしまうまでの、リズボン家崩壊の1年間を描いていきます。

主役というべき姉妹が、ぼくという語り手から形づくられているためか、不思議と深刻さが希薄な作品です。彼女らの心情が直接的に語られることがないのです。悲しい出来事を扱っているのだけれど、教訓めいた何かを訴求するものではありません。確かに、執拗ともいえる厳格な母親への反発や、セシリアの死以降、周囲との疎外感を強めていく姉妹の様子は見ることができます。ここから逃げ出したいという心の断片も窺えます。けれど、自らの命を断とうとする決定的な何かを知ることができません。

読者の年代や、男女によっても受け取り方が違うのだろうけれど、自分には絵画的で寓話的、つまり絵本のような印象が強かったですね。

姉妹が死を選んだ原因について、語り手であるぼくは、ぼくなりの結論を提示します。ここは、読者が感じとるべきものなのでしょう。そういう意味では、本書はリドルストーリーと言えるのかもしれません。

ソフィア・コッポラ監督映画『ヴァージン・スーサイズ』

本作品が原作である1999年ソフィア・コッポラ監督映画『ヴァージン・スーサイズ』はこちら。