【本の感想】ロバート・ゴダード『日輪の果て』

ロバート・ゴダード『日輪の果て』

ロバート・ゴダード(Robert Goddard)『日輪の果て』(Out of the Sun)(1996年)は、名品『蒼穹のかなたへ』の続編です。(リンクをクリックいただくと感想のページに移動します

前作から6年後(実際に出版されたのも6年経過しています)、ハリー・バーネットが再登場するのですが、引き続き文芸作品もかくやという重厚さを期待すると、大きく外してしまいます。例えるならば、まるで下手くそなドナルド・E・ウェストレイクの作品を読んでいるようです

ハリーに突然かかっきた電話。それは、息子が、重篤な状態であるというものでした。自分に30代の息子がいることを初めて知ったハリー。若き日の過ちに思いを馳せます。ハリーは、やむにやまれず、まだ見ぬ息子デイヴィッドを訪ねるのでした。

突然息子の存在を知らされ、さらに重篤な状態であると告げられるのは、高嶋哲夫『イントゥルーダー』の冒頭にさも似たりです。本作品も、つかみはオッケー!なのですが、ここから暫く退屈な展開が続きます。

デイヴィッドの母親アイリスに、拒絶されるハリー。夫との間に子供ができなかったアイリスが、ハリーを利用してなした子がデイヴィッドだったのです。何と、長じてデイヴィッドは、天才数学者として活躍していました。デイヴィッドの病状に不信を抱いたハリーは、アイリスの止めるのも聞かず、真相究明に乗り出します・・・

前作を未読であっても、本作品を読むのに問題はありません。多少接点はあるのですが、”おおっ”となるほどでもないですね。ハリーの仇敵バリー・チップチェイスが、ちょっとした役回りを演じるくらいでしょうか。

調べが進むうち、様々な人々との出会いと別れを経験する返すハリー。命を狙われつつも、粘り腰で難関をくぐり抜けていきます。前作のダメ男ハリーの、うだつの上がらなさは引き続きなですが、本作品ではなかなかの男っぷりを見せてくれます。ダメ男が、それでも奮闘するからこそ良かったのですがねぇ・・・

本作品は、謎が謎を呼ぶというねっちっこい展開には程遠いですね。真相が分かるまで、淡々と進んでしまうのです。所々で起こる連続殺人の方法も、”えー”と言わざるを得ません。ラストだけは、良いのですよ。ラストだけは・・・ね。

ちなみに、本作品の続編は、『還らざる日々』。10年と時を経て、ダメ男ハリーはどうなった?

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