刑務所の民営化というワン・アイディアをぐいぐいと押し通した作品。カリカチュアライズされたお役人の痴態はちょいといき過ぎで笑うに笑えません。ハチャメチャな展開に結末への期待は高まっていくのですが不完全燃…
【本の感想】戸梶圭太『CHEAP TRIBE ベイビー、日本の戦後は安かった』
戸梶圭太『CHEAP TRIBE ベイビー、日本の戦後は安かった』は、1957年、1969年、1974年、1985年、1995年の5章からなる連作短編集で、その時々の世相を切り取ったかたちでストーリーは進みます。
とは言え、時代の大きなうねりに乗っかっているわけではなくて、それを横目で見ながら、こんなこともありましたっけ、という程度の切り取り方です。
主人公の沼田永吉は、醜悪な容貌に、歪んだ性格、飽くことを知らない情欲の持ち主です。炭鉱のタコ部屋で生まれ育ち、生死の境を彷徨う過酷な状況を辛くも生き抜いた永吉。第1章から陰惨極まる描写に、うんざりさせられるばかり。
笑えない・・・
ひたすらヒトの暗い部分を目の前に開陳されるだけです。笑いがないから、どうにも疲れてしまいます。
第2章は学生運動、第3章はノストラダムスの大予言と超能力ブーム、第4章は青少年向けの訓練施設を取り上げ、永吉がどのような人生を送っていくのかがつづられます。第5章では何とも痛ましい末路を辿るのですが、永吉の捻じ曲がった精神構造に辟易してしまった分、快哉を叫んでしまいました。
著者の作品に慣れていないがゆえに、笑えるところを探しながら読み進めました。結局、不快なまま終わってしまうのですが、そもそも、読み方を間違えたのかも。ピカレスク・ロマンと考えれば良かったのかなぁ・・・
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