【本の感想】折原一『倒錯のロンド』

折原一『倒錯のロンド』

1989年 週刊文春ミステリーベスト10 国内部門 第7位。

折原一『倒錯のロンド』は、いわゆる叙述ミステリです。手に取る前から知っていたので、すっかり疑り深い読み方になってしまいました。

推理小説家を目指す山本安雄は、会社を辞め雑誌の新人賞応募に情熱を傾けています。遅々として執筆が進まず鬱勃とした日々を過ごしていた安雄は、ある日、天啓を得たかのように自信作『幻の女』を一気に書き上げます。友人 城戸の感想を聞き、受賞間違いなしの確信を持った安雄。ところが、城戸は、ワープロで清書した『幻の女』を電車の中に置き忘れてしまうのです。

落胆し城戸を絶縁した安雄は、やがて白鳥翔という名の作家が『幻の女』で新人賞獲得したことを知ります。その『幻の女』は、安雄が執筆した作品そのもの。安雄の作品で、新人賞を掠め取ったものは誰かなのか。城戸が殺害されるに至って、白鳥翔への疑いを深めていきます。安雄は、激情にとらわれ、白鳥翔への異常な行為を繰り返すようになるのでした・・・

安雄が徐々に壊れていく様が、「誰も信じてくれない系」の心理サスペンスを予感させるのですが、さにあらず。本作品は、語りそのものの巧妙な仕掛けを堪能する類のミステリです。

前半部分の伏線は、なんとなく気がつくのですが、真相にどう絡んでくるのかは分かりません。しっくりいかないのが、『幻の女』が誰が読んでも受賞間違いなしと確信してしまうこと。これがないと話しが進まないのだけれど、電車で拾った原稿を自分名義で応募するでしょうか。この部分に説得力が少ないのは残念です。

事件の真相より、本作品が三部作の第一作目であることの方が驚きました。はてさて、どう続いていくのやら。

なお、本作品は、江戸川乱歩賞の最終選考まで残ったとのことですが、新人賞への熱意が込められているようで、感慨深いものがありました。